2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13384
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 勇哉 東京大学, 大学院数理科学研究科, 助教 (20780034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 極小モデル理論 / ACC予想 / LSC予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
超商特異点の極小ログ食い違い係数について研究した。超商特異点とは超曲面特異点の有限商となっているような特異点のクラスである。極小ログ食い違い係数に関する予想としてLSC(lower semi-continuity)予想とPIA(precise inversion of adjunction)予想がある。本年度の成果の1つはLSC予想とPIA予想を超商特異点に対して証明したことである(柴田康介氏との共同研究)。LSC予想は超曲面特異点と商特異点という2つの特異点のクラスに対し証明されていた。本結果はこの2つのクラスを含む広いクラス(超商特異点)に拡張した点が重要である。また関連する問題として、商特異点に関するBorisovの予想を証明した。これにより、バウンダリーが無い場合の商特異点のACC予想が証明されたことになる。
本結果の証明においてカギとなったのは、商多様体の極小ログ食い違い係数を、弧空間の理論を使って記述したことである。そのための理論構築のために、商多様体に対する弧空間の理論を整備した。極小ログ食い違い係数以外の研究にも応用が期待できる。
2つ目の成果として、周期グラフの配位数列が十分大きいところで準多項式になることを証明した。これによりGrosse-KunstleveとBrunner, Sloaneによる予想を肯定的に証明した。問題自体は組合せ論の問題であるが、その証明には環論(有限生成モノイドの理論)を用いている。周期グラフから、対応する有限生成モノイドとそれ上の加群を構成し、ヒルベルト多項式の理論を適用することが証明につながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LSC予想とPIA予想を超商特異点に対して証明した。超曲面特異点と商特異点という2つの特異点のクラスに対し証明されていたLSC予想を超商特異点というより広いクラスに拡張した点に意義がある。また、商特異点のACC予想(バウンダリーが無い場合)について証明を得たことも大きな進展である。また、今回整備した弧空間の理論が今後の研究に応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は商多様体の極小ログ食い違い係数を弧空間の理論から研究した。証明した定理をよりきれいな形にするためには、形式的冪級数環上の多様体を扱う必要がある。こういった多様体に対しても弧空間の理論を発展させることには技術的な意味があり今後の課題である。また、当初の目標であった極小ログ食い違い係数を与えるような上空の因子の情報を得ることができていない。上空の因子の情報を弧空間の情報から得ることも課題である。
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Causes of Carryover |
今年度は世界的なCOVID-19の影響のため、予定していた国際研究集会や情報収集が延期となった。
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Research Products
(5 results)