2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K13388
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 健人 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40779146)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | K安定性 / 極小モデル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
双有理幾何学の観点からK安定性の理解を進展させることを主たる目標としていた。今年度は、非常に重要なクラスである(非特異)3次元ファノ多様体に対しK安定性の理解を深めた。3次元ファノ多様体はIskovskikh、森・向井によって丁度105の変形族をもつことが知られ、それら各族の元がいつK安定がどうか具体的に調べよう、という試みを(2020年1月のAmerican Institute of Mathematicsのワークショップより)C. Araujo, A-M. Castravet, I. Cheltsov, A-S. Kaloghiros, J. Martinez-Garcia, C. Shramov, H. Suess, N. Viswanathanと共同で議論をスタートした。各105族の全ての元に対しこの問題を考えるのは考えるべき対象が膨大過ぎてあまりに非現実的な目標だったため、各族の一般元がいつK安定かどうかを完全に決定する、という目標で共同研究を進めた。そして今年度、全ての族の一般元に対しK安定かどうかを完全に判定することに成功した。この結果は現在MPIMプレプリントサーバに公開し、また投稿中である。また、今年度は他にも向井・梅村三次元多様体の変形のうち無限自己同型を持つもののK安定性問題の解決、「No.3.11」なるファノ多様体(これは上記9人の共同研究のテクニックだけでは太刀打ちできなかった唯一のファノ多様体)のある元(つまり一般元も)のK安定性を示す論文の投稿も行った。また、超平面配置の対数的ファノ多様体のK安定性を決定する論文がJournal of Algebraic Geometryに出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
与えられたファノ多様体がいつケーラー・アインシュタイン計量をもつか、という問題はカラビの問題と呼ばれ、古くより知られた問題である。この問いはK安定性問題と同値であることが示されて尚、この問題は一般に難しいとされてきた。多重フィルター付き線型系の理論などの多くの最新のテクニック・そして自己同型群の大きなファノ多様体に着目するという古典的なテクニックを組み合わせ、上記の9人の共同論文にて3次元の各族の一般元に対しカラビの問題を解決できたことは特筆すべき重要な進展であると言える。低次元のファノ多様体が与えられたときそのK安定性を判定することは、計算可能な問題である、といって良いような段階にまで理論を進展させることができた。ただ、この理論は同型類を一つ与えた場合は非常に強力だが、族を考えその全てのメンバーに対しK安定性を考えるような状況ではまだ良い理解が得られていないといって良いだろう。ファノ多様体に限らない一般の偏極代数多様体についても理論は未整備であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは上記の成功を「与えられた族の全ての元」に対し適用できるような理論に進展させることが出来るかどうかは興味深い。現在のところ、ファノ多様体のK安定性はその多様体の内在的な双有理的性質を熟知したうえで計算・判定がなされるので、計算可能と言えど非常に計算コストが高いように感じる。超曲面のような「一見単純」なファノ多様体に対しK安定性をもっと簡単に判定できるようになるような理解が欲しい。また、今年度はファノ多様体に集中してきたが、一般の偏極代数多様体のK安定性はファノ多様体のときと様子が著しく異なり、K安定性の(因子的)付値判定法のような単純な言い換えを期待するのは難しいのではないかと考える。他方、準単項的付値にまで範囲を広げてどの程度元のK安定性の定義と乖離するのかを見極めることは重要であるように感じる。
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Causes of Carryover |
共同議論や国際研究集会の参加を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で全てキャンセルとなってしまった。研究を進展させるべく書籍の購入やオンライン議論を円滑に行うための設備投資を計画している。
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