2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K13389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾高 悠志 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30700356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | モジュライ空間 / K3曲面 / 非アルキメデス幾何学 / Gromov-Hausdorff崩壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
およそ2019年度の前期においてはもともと複素数体上で私も関わって理論展開してきた複素数体上の代数多様体のMorgan-Shalen-Boucksom-Jonsson型のコンパクト化(これは代数多様体や複素多様体ではないが境界においてトロピカル幾何学版を捉えている)の非アルキメデス幾何的な版の基礎理論を作った。すなわちBerkovich解析空間のそれに対してMorgan-Shalen-Boucksom-Jonsson型のコンパクト化を定義して基本性質や応用の可能性を研究、模索した。これはリッチ平坦ケーラー計量の崩壊をそのモジュライ空間を用いてとらえる視点を与えていることを以前の研究の中で証明していた。これらの成果は今後標準ケーラー計量の挙動の問題やミラー対称性に関わる一部の問題への応用の基礎づけになると見込まれる。また、そこで大島芳樹氏との以前の共同研究の一部をBerkovich幾何学の言葉で言い換えた。また、そのK3曲面の崩壊理論の大島芳樹氏との共同研究は別側面においても更に発展し、楕円K3曲面のモジュライのコンパクト化の理解の進展並びに以前の共同研究の測度論的な精密化のきっかけをつかみつつある(これは大島氏の貢献の大きい共同研究成果)。私はその中で代数幾何学的な意味づけを付与することに重点を置いて研究をした。大きな目で見てこれらはのちにより一般的な標準ケーラー計量の研究に役立つとも推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標準ケーラー計量とりわけリッチ平坦ケーラー計量、超ケーラー計量の漸近挙動の問題については、あまり測度を込めて論じられることがなかったが、本多SunZhangの仕事に影響を受け、それらを完全に決定できた大島氏との共同研究の意義は大きいと思われる。私の役割はそこでの代数幾何学的な意味づけを与えることであった。これらはK3曲面および超ケーラー多様体の代数幾何学に新しい視点を与えると想定される。また前期に行った非アルキメデス幾何学的なMSBJ型コンパクト化の研究も今後に意義深いものになると想定される。欲を出せば、もう少しスムーズに進展させたかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降においては、まずしばらくは大島氏との共同研究におけるK3曲面あるいは超ケーラー多様体ないしCalabi-Yau多様体の崩壊理論とそれに関わる代数幾何学的ないし非アルキメデス幾何学的な面の基礎理論の更なる精密化と発展に専念し、さらに一方でFano多様体やそれに近しい代数多様体のK安定性ないし定スカラー曲率ケーラー計量の存在問題に関して最近の進展を自分なりに理解、言い換えをしたいとも考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度においてはコロナ問題により多くの海外出張が延期になり、学会に関わる経費を使用しないことになった。コロナ禍はいつ収まって出張等が許されるようになるか見通しの立たない現状ではあるが、その分研究に必要ないし有用となるパソコン関係の設備を整えることや本の購入にあてたいと思う。
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Research Products
(2 results)