2020 Fiscal Year Research-status Report
Noncommutative arithmetic phenomena appearing in Iwasawa theory
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18K13395
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
原 隆 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (40722608)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | p 進アルティン L 関数 / 保型 L 関数の臨界値 / CM 体 / ホイッタッカー周期 / ランキン-セルバーグ畳み込み積 / 高次指標多様体 / Bruhat-Tits の建物 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に以下の2つの研究に従事した; (a) CM 体の p 進アルティン L 関数の構成 (大阪大学 落合理准教授との共同研究) (b) GL(3)×GL(2) の保型 L 関数の臨界値のカップ積による解釈 (九州大学 並川健一助教との共同研究) 項目 (a) については、当初は Greenberg による総実代数体上の p 進アルティン L 関数の構成に準ずれば比較的容易に構成出来るだろうと考えていたが、CM体 の p 進ヘッケ L 関数の多変数性や補間公式の複雑さから生ずる困難が幾重にも立ち塞がり、事前の想定よりも興味深い研究となった。最終的にほぼ所望の性質を持つ p 進アルティン L 関数を (CM体の多変数 [可換] 岩澤主予想の成立を仮定した上で) 構成できたので、次年度に最終確認の上、論文にまとめる予定である。 項目 (b) について、数年前より並川健一氏と GL(3)×GL(2) の保型 L 関数の臨界値を、明示的に記述されたアイヒラー-志村コホモロジー類のカップ積で表示することを試みてきたが、今年度に漸く満足のゆく定式化に成功したため、論文にまとめた。GL(n) の有限次表現の具体的な多項式模型をとり、アイヒラー-志村写像を明示的に定義するなど、すべての構成を明示的に行った恩恵として、Raghuram のホイッタッカー周期を臨界点に依らない形に精密化することが可能となり、さらには GL(3) のホイッタッカー周期にモチーフ的解釈を与えることに成功した。本研究から派生する結果も幾つか得られているので、次年度に論文にまとめたい。 なお、高次指標多様体と Bruhat-Tits の建物を用いて3次元多様体内の本質的三つ又分岐曲面の構成を行った東京大学の北山貴裕氏との共著論文が Geometriae Dedicata 誌に掲載決定となったことを付記しておく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は事前の想定通り、年度の前半は前代未聞のコロナ禍によるオンライン講義への対応など、大量の大学での業務に忙殺されてまともに研究を進めることも叶わなかったが、一方でリモートワークの普及により却ってオンライン会議システム (Zoom など) が急速に整備されたため、年度の後半ではオンラインを活用して遠方の共同研究者とも積極的に研究打ち合わせを実施することができた。結果的に長年取り組んできた項目 (b) についてのプレプリントをまとめることが出来た。この結果は、Januszewski による GL(3)×GL(2) の p 進 L 関数の構成の精密化にも繋がり、さらなる進展が期待される。さらには吉田の基本周期を用いた Raghuram のホイッタッカー周期のモチーフ的解釈 (並川健一氏との共同研究) や、総虚体上の GL(n+1) × GL(n) の保型 L 関数の臨界値のコホモロジー的解釈 (並川健一氏, 宮﨑直氏との共同研究) など、派生する研究も進んでおり、特に項目 (b) については順調に研究が進んでいると考える。 項目 (a) についても、CM 体の p 進アルティン L 関数の構成を通じてガロワ表現の CM 変形についての造詣をより一層深めることが出来た。このことは、昨年度より落合理氏と着手した CM 体上の非可換岩澤主予想についての研究にも大きな還元が期待され、研究は着実に進展していると言えよう。 以上の現状を踏まえ、コロナ禍の影響にもかかわらずそれなりに順調に研究を進展することが出来たのではないかと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究最終年度であるが、現在進行中の研究課題がいくつか残っているので、それらを可能な限り論文にまとめて対外的に発信することに注力したい。2020年度は多くの研究集会がコロナ禍の影響で中止を余儀なくされたが、近年ではオンラインでの研究集会等の環境も整備されてきたためか、 (オンラインも含め) 徐々に研究発表の場が増えてきているので、まとめられた研究成果を積極的に発表していくつもりである。また、2018年度から個人で行っていたCM体の同変岩澤主予想に関する研究成果については、2020年度も論文の形にまとめることが出来なかった。今年度の落合理氏との共同研究から還元されることも非常に多くあるので、巧く時間を見繕った上でこちらも徐々に論文にまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行に伴う出張の制限および、各地での研究集会の中止に伴い、旅費の支出が計画よりも大幅に抑えられてしまったことが、残額が生じてしまった最大の要因である。次年度も以前ほど自由に出張できる状況になるとは想像し難いが、少ない機会を有効に活用して共同研究者との研究打ち合わせのための旅費に利用したり、研究図書等の購入に充てたいと考えている。
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