2018 Fiscal Year Research-status Report
関数体上の多重ゼータ値から見た無限素点と有限素点の関係
Project/Area Number |
18K13398
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
三柴 善範 福岡工業大学, 工学部, 助教 (70737725)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多重ゼータ値 / 関数体 / 周期 / t加群 / Carlitz多重ポリログ |
Outline of Annual Research Achievements |
Kを有限体上の一変数有理関数体とし,次数1の無限素点を固定する.また,vをKの有限素点とする.標数0における通常の多重ゼータ値,p進多重ゼータ値の関数体類似として,無限進多重ゼータ値およびv進多重ゼータ値が定義されている.標数0の世界では,多重ゼータ値がQ上張る空間からp進多重ゼータ値がQ上張る空間へのQ代数準同型で,多重ゼータ値をインデックスが同じp進多重ゼータ値に送るものが存在すると予想されているが,未解決である.私はこれまでにChieh-Yu Chang氏と共同で,この予想の関数体類似が成立することを示した.但し,得られた写像は線型写像で,積との可換性は未解決である.つまり,無限進多重ゼータ値がK上張る空間からv進多重ゼータ値がK上張る空間へのK線型写像で,同様の性質を満たすものが存在する(Kをその代数閉包にしても成立).本研究の目的は,この結果をさらに推し進めて,無限進多重ゼータ値とv進多重ゼータ値の間に成り立つ関係を解明することである.本年度の主な研究実績は以下の通りである. (1) Chang氏との結果の証明で重要となったのが,無限進・v進多重ゼータ値をあるt加群の対数関数で記述することである.これまでは,各ブロックの最後の座標にこれらの値が現れることしか分かっていなかった.しかし,本年度はChang氏とNathan Green氏と共同で,無限進のときに全ての座標を具体的に記述することに成功した.詳しく述べると,tモチヴィック多重ゼータ値およびtモチヴィックCarlitz多重スターポリログ値という自然な対象を定義し,それらをTaylor展開したときの係数が,上記の座標に現れることを示した.本結果は論文にまとめ,現在投稿中である. (2) 整数論サマースクール「多重ゼータ値」の世話人の一人を務めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目的の一つは,無限進多重ゼータ値が張る空間からv進多重ゼータ値が張る空間への写像が積と可換であることを証明することと,その核の決定である.これらを達成するために,関連するt加群の対数関数を詳しく調べることは重要と考えられる.本年度は,無限進多重ゼータ値が現れる点におけるこの対数関数の値を完全に決定することができたことから,本区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を踏まえて,問題の写像の積との可換性および核の決定を行っていく.但し,核の決定は難しい問題と思われるので,核の決定から帰結される主張についても,直接証明を試みる.特に,v進多重ゼータ値が張る空間の重みによる直和分解を与える.これにはJing Yu氏による部分t加群定理のv進版が必要と考えられるが,v進部分t加群定理については,Chang氏との最近の議論により証明の方針が定まっている.
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Causes of Carryover |
講演者として参加予定であった香港での研究集会が中止となり,出張をキャンセルしたため. 繰り越し分と合わせた予算は,共同研究と研究集会参加のための旅費,およびPCと図書の購入に充てる.2019年度より琉球大学に異動したため,交通費が当初の予定よりも多く掛かる見込みである.
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Research Products
(5 results)