2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13405
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑垣 樹 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60814621)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミラー対称性 / 深谷圏 / リーマン・ヒルベルト対応 / 完全WKB解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミラー対称性とは複素幾何とシンプレクティック幾何をつなぐ不思議な予想である。その一つのヴァージョンとしてホモロジー的ミラー対称性がある。これは複素幾何側での連接層のなす圏と、シンプレクティック幾何側でのラグランジアン部分多様体がなす圏を比較する予想である。 私はこのシンプレクティック幾何側の圏にたいする通常とは異なるアプローチについて研究している。通常の定義では非線形解析をつかったアプローチがなされるが、異なるアプローチの方法として代数解析を使うというのがある。もっと具体的には、多様体上の層の理論を余接束上で展開するという超局所層理論というものを用いる。このアプローチはNadler-Zaslowに始まり、近年のGanatra-Pardon-Shendeによってあるところまでは極められた。その「あるところ」というのは、非コンパクトな完全シンプレクティック多様体と言う状況である。この状況では通常のアプローチでもかなり簡単化されるところがあり、代数解析を使ったアプローチもうまく行く。 私は次のステップとしてコンパクトな場合を研究している。前年に、コンパクトなものであって特殊な条件を満たすものは、層理論を用いて記述できるということを証明した。この結果の記述にあたり、Novikov環という概念が大事になり、Riemann-Hilbert対応との関係を調べる中で、完全WKB解析という代数解析学の分野とつながることを見出した。今年度はこの結果を完成させて論文にまとめ、各所で発表した。 このWKB解析との関連は、新しい形のRiemann--Hilbert対応予想を産み、その予想についても部分的に研究を行なった。また、WKB解析と繋がったことでクラスター代数との関連も自然に生まれ、その方向についても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった深谷圏の層理論的理解は順調に進展している。完全WKB解析と繋がったことで新たな方向性が大きく開き、今後の進展にさらに期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き超局所圏の研究を進める。完全WKB解析の方向性で得られた予想についても研究を行う。最終年度であるので、得られた結果で論文にまとめていないものを執筆することにも注力したい。
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Causes of Carryover |
感染症蔓延の状況から旅費への支出がなく、使用計画を大幅に変更して使用した。旅費に使う予定だった助成金で専門書を購入し研究へ役立てた。翌年度は出張ができるようになれば旅費に回し、そうでなければ今年度と同様に専門書の購入に役立てたい。
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