2019 Fiscal Year Research-status Report
A deeper understanding of moduli theory integrated by special Riemannian metrics and convex polytopes
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18K13406
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
四ッ谷 直仁 香川大学, 教育学部, 准教授 (00806755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GIT-安定性 / モジュライ空間 / T-variety / δ不変量 / Fano多様体 / Gluing構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
新田氏(東京理科大学)と斎藤氏(京都大学理研)との共同研究により、一様Ding相対安定性について4次元以下のトーリックファノ多様体の場合に全て判定した.またこの共同研究の遂行中に、Tohoku Math Journal(2019)から発表されたBin Zhouとの共同研究結果に一部修正点が見つかり, errataを作成する必要がある.しかし同時にトーリック多様体において安定性が崩れるための最適条件(optimal destabilizer)に関する研究課題が見つかるという副産物もあった。また、 pairwiseな代数曲線の一様K-安定性に関する結果が数理解析講究録(2019)から出版され、この結果について、北京大学(2019年9月)と九州大学伊都キャンパス(2019年11月)で発表した。また北京大学で研究発表の際、北京大学ポスドク研究員Kewei Zhangと申請者の研究キーワードの1つに掲げられているδ不変量について詳しく議論をすることができた。その結果、現在Asian Journal of Mathematicsに投稿中のトーリック多様体上のδ不変量に関する結果が、より一般的な範疇(T-variety)でも示せることが明らかになった。この結果は既存の先行研究結果の組み合わせで示されるが、直接的な証明はまだ発見されていないため、2020年度の研究目標となる。
一方で、ハイパーケーラー多様体の(微分幾何学的な)貼り合わせ構成という研究課題については、3重点を持つK3曲面の場合に大域的なスムージングを構成する事に成功している。 これは1990年代の川又-並河のカラビ-ヤウ構成法及び最近発表された橋本-佐野(arXiv:1902.01027)に挙げられる代数幾何学の変形理論の微分幾何学的特徴付けを与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は2018年度に得た経験を礎に、大学運営の仕事の傍ら,研究活動に邁進することができた。また担当科目に参加する学生のlevelやmotivationがおおよそ把握できていた事も大きい。進展のあった研究結果については精力的に研究集会などで発表を行い,新たな研究課題が見つけられたのも大きな収穫である。こうした事の背景には、申請者がポスドク時代に中国を中心に。国外研究者との研究交流を温めていたことが貴重な足がかりになっている。実際、2020年1月上旬に上海に赴き、かつて所属していた復旦大学、及び研究関係者が所属する同済大学と上海科学技術大学にて3次元カラビ-ヤウ多様体の微分同相性に関する最近の研究進展について発表の機会を得た。こうした学術交流の場における若手研究者間の議論内容は、今年発表する「K3曲面の大域的なスムージング構成」とも密接に関わっている。学部学生の教育と最前線の研究結果をfollowするという両立は決してやさしい事ではないが、数学意識の高い学部学生が同研究室の周りにも徐々に増え始めていることが、申請者のmotivationを継続する大きな原動力の1つともなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」でも述べたように, Optimal destabilizerに関する具体的な研究課題が見つかったので,2020年度はその課題について取り組む.このoptimal destabilizerの計算については,中国湖南省の湖南大学に所属するYaoがトーリックファノ多様体上での相対Ding安定性について,詳しい計算結果とalgorithmを確立している(arXiv:1701.04016v2).したがって,彼が相対Ding安定性に使ったoptimal destabilizerの議論を我々の相対K安定性に応用する. またGIT安定性に関するもう一つの研究課題であるT-variety上でのδ不変量についても考察する。より具体的にはComplexity 1のT-varietyにおいて、Greatest Ricci lower boundと呼ばれる微分幾何学的な不変量と代数幾何学的な不変量であるδ不変量が一致することを純組み合わせ論的な議論から証明する。これはT-varietyの特別な場合であるトーリック多様体については申請者がすでに"The Delta invariant and the various GIT-notions of toric Fano varieties"でcombinatorialな証明を与えている。この結果をT-variety上に拡張するのが、2020年度の研究目標となる。 一方でRicci-平坦なKahler多様体の微分幾何学的構成については、今月発表した、"Global smoothings of degenerate K3 surafaces with triple points(arXiv:2004.03162)"、で得られた研究結果を礎に、3次元カラビ-ヤウ多様体の微分同相性の問題について考察する。
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Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策においてすでに述べたように, (1) Optimal destabilizerに関する研究課題を推進するための中国湖南省湖南大学への渡航費, (2) 複素3次元カラビ-ヤウ多様体の微分同相性に関する共同研究projectを実行するためのソウル市Hongik大学およびKIAS研究所への滞在渡航費, (3) T-variety上でのδ不変量に関する研究課題実行のための中国北京市北京大学(BICMR)への海外渡航費などが大きく挙げられる現在の使用目的及び使用計画となる.またCOVID-19のために延期になってしまった国際研究集会にも, pandemicが収束し次第、積極的に参加・発表の機会を得て,今後の国際共同研究projectの基盤となるための資金としても運用したい.
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Research Products
(10 results)