2020 Fiscal Year Research-status Report
A deeper understanding of moduli theory integrated by special Riemannian metrics and convex polytopes
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18K13406
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
四ッ谷 直仁 香川大学, 教育学部, 准教授 (00806755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GIT-安定性 / モジュライ空間 / ファノ多様体 / カラビ-ヤウ多様体 / トーリック多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主にカラビ-ヤウ多様体と呼ばれる,リッチ平坦なEinstein多様体の微分幾何学的構成法についての研究を遂行した.具体的には(1) 3重点のような複雑な特異点をもつ単純正規交叉複素曲面の場合でも,適切な条件下でスムージング (特異点解消) してやれば, 標準束が自明な複素曲面の族が gluing 構成の議論をベースに構成できることを微分幾何的に証明した(arXiv:2004.03162).またこれらの結果については 2020年度に行われたいくつかの国内研究集会において, 発表の機会を頂いた (10.研究発表参照).しかしその後, 共同研究者の土井氏と議論を行ったところ, 同論文の証明の一部には論理的なgapがある事を指摘されたため, 現在修正を行っている.また同時に K3 曲面などの具体例の構成も含めた内容として加筆を行い,土井氏との共著論文としてまとめる予定である.
(2)また土井氏との共同論文 Doubling construction of Calabi-Yau threefolds, New York Journal of Mathematics, 20 (2014), pp. 1203-1235. の続きの研究結果として, NYJMの論文では取り扱うことのできなかったカラビ-ヤウ多様体の微分同相性について考察を行い,上述の論文で構成した3次元カラビ-ヤウ多様体の中から同じトポロジカルタイプを持ちながらも,互いに微分同相でないものを発見した(arXiv:2101.11841).一方で, 我々の構成したカラビ-ヤウ多様体の中には,このような同様の性質を持つものがまだ多数存在すると予想しているが, それらについては微分同相性を判別するための幾何学的不変量が存在しないため,それらをまず定義する必要がある.こうした課題については2021年度に取り組む予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,大学運営に関わる仕事や,教育学部特有の仕事などが急激に増え,研究に携わる時間が大幅に減ってしまった.一方で,現在の研究機関に異動してから培った教育経験を礎に、授業準備などを出来るだけ効率よく終了させるなどの工夫を行った.多忙な研究生活の中に新たな研究結果や研究課題を得ることができた背景には,申請者がポスドク時代に国外研究者との研究交流を温めていたことが大きい.実際,上述の発表論文に関わる先行研究結果については,韓国のNam-Hoon Lee (Hongik大学:ソウル)や,現在遂行中の研究に関する議論を行っているYi Yao (Henan大学, 中国)との貴重な意見交換が研究の進展に大きく関わっている.より一層の進展に繋げるには,彼らの所属する研究機関に直接訪問し,アドホックな議論を行うことが必要不可欠であるが, COVID-19の影響下のため,海外渡航が現在では大変厳しい状況となっている.こうした中でもmotivationを失わず,地道に研究とacademic communicationを続けていることが,2020年度の研究結果につながったと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」でも述べたように,3重点を持つ単純正規交叉複素曲面を適当にスムージングしてやることで,2次元Calabi-Yau曲面(K3曲面)を構成する共著論文を出来るだけ早く完成させる.またこの論文においては複素構造の変形理論が密接に関わっているが,これは以下に記述するような偏極多様体上の標準ケーラー計量の問題を考察する際にも大きな鍵となる.とくに複素構造の退化などは微分幾何的には取り扱いづらく,代数幾何学的なアイディアが必要になるはずである.こうした観点からも,トーリック多様体よりさらに広い範疇であるT-varietyの観点から問題設定を行う.とくにδ不変量や標準ケーラー計量といったケーラー幾何学の重要な不変量が, T-varietyに付随する多面体の言葉でどのように記述できるかについて考察する.またトーリックファノ多様体におけるExtremal計量の存在問題については, (1)GIT-安定性を用いた判定法による計量の存在確認 (2)存在する場合はトーリックケーラーポテンシャルを使った具体的な計量表示 の双方から考察する.
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Causes of Carryover |
今後の推進方策において述べたように, (1) トーリックファノ多様体上でのextremal計量の存在問題に関する研究課題を推進するためにUQAM(カナダ,モントレオール)への渡航費, (2)複素3次元カラビ-ヤウ多様体の微分同相性及びスムージング理論に関する共同研究プロジェクトを実行するためのHongik大学(ソウル)への滞在渡航費, (3) T-varietyを用いた複素構造変形理論の発展のためにベルリン自由大学(ドイツ)に訪問研究するための研究資金 などが大きな使用目的となる. COVID-19のためにこれらの研究計画は昨年度実行予定だったものも含めて延期の状態であるが,パンデミックが収束し次第,アジア圏近郊から徐々に国際共同研究プロジェクトを実行して,実現していく予定である.
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Research Products
(7 results)