2021 Fiscal Year Research-status Report
A deeper understanding of moduli theory integrated by special Riemannian metrics and convex polytopes
Project/Area Number |
18K13406
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
四ッ谷 直仁 香川大学, 教育学部, 准教授 (00806755)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 複素構造変形理論 / ケーラー多様体 / トーリック多様体 / K3曲面 / ボット多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は(1)土井氏との共同研究により標準束が自明かつ3重点を持ちうるような単純正規交叉複素曲面に対し,微分幾何学的なスムージングを構成させた(arXiv:2203.09304).同論文は1983年のFriedmanによるK3曲面の代数幾何学的スムージング理論(Ann.Math.118(1983),75-114.)を微分幾何学的に再構成し,さらには小平曲面や複素トーラスといった, Friedmanの議論では得られていなかった複素曲面も含んだ形に拡張している.
この微分幾何学的スムージング理論を(a)3次元カラビ-ヤウ多様体やハイパーケーラー多様体を含む複素多様体へと高次元一般化すること, (b)G_2-多様体やSpin(7)-多様体といった実多様体へと応用すること,は今後の研究課題となっている.とくに前者(a)の場合は複素多様体であるので、特異点を持つ複素多様体の変形理論が適用できるが、後者(b)のような実多様体の場合には、そもそも特異点を持つ変形理論の枠組み自体が誕生しておらず、まだまだやるべき課題は山積みである。
(2)また投稿中の論文であった、ダブリング構成によって得られた3次元カラビ-ヤウ多様体の微分同相性に関する研究結果(arXiv:2101.11841)については、投稿先からもらったreferee reportをもとに,再度考察を行った結果,適宜Riemann-Rochを適用し,対応するcubic formの計算をうまく処理してやれば,主張が「ピカール数2の3次元ダブリングカラビ-ヤウ多様体の微分同相性を全て識別する」形へと主張を一般化できることが分かった.この研究課題については,2022年度中に研究環境を整わせ,早急に取り掛かる予定である.この研究結果については,2022年度数学会(年会:埼玉大学)及び国内研究集会(可微分写像の特異点論及びその応用)にて発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は前年度に引き続き,大学運営に関わる仕事や,教育学部特有の仕事が急激に増えた関係上,自身の数学研究に携わる時間が大幅に減ってしまった.その中でも他研究者とうまく連携を取りつつも,普段の授業準備を今までの教育経験を活かしながら効率的に行うことで,何とか研究遂行に必要な時間を確保した.多忙な研究生活の中にもかかわらず,新たな研究結果や研究課題を得ることができた背景には,申請者がポスドク時代に国外研究者との研究交流を温めていた事が大きい。さらに,最近ではZoomを用いた国際的な研究集会やセミナーなどがオンラインで開催されているため,それらを有効に活用しながら,地方大学の持つdisadvantageを極力回避するなどの工夫も功を奏したと言える.とはいえ,オンライン上の議論では議論できる内容にも限界があるため,関係研究者の集う研究集会に参加しアドホックな議論を行うことや,研究内容に密接に関わる研究者の所属する研究機関に直接訪問するといった研究交流は非常に重要である.2022年度はそうしたacademic communicationを足がかりに前年度になし得なかった研究内容を発展させ,更なる飛躍を目指す.
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」でも述べたように,「ピカール数2の3次元ダブリングカラビ-ヤウ多様体の微分同相性を全て識別する」研究プロジェクトを速やかに遂行する.また一方で,研究キーワードにも挙げられているボット多様体の持つ豊な幾何構造に注目し, K-安定性及びスロープ安定性との関係といった, GIT-安定性に関するプロジェクトも実現させる予定である.また現在大きく注目しているのが,2021年度発表の論文(arXiv:2203.09304)でも有効に使われた複素構造の変形理論であるが,一般に複素構造の退化などは微分幾何学的には取り扱いづらく,代数幾何学的なアイディアが必要となる.とくに申請者が研究の主対象とするトーリック多様体は滑らかな場合「剛的」すなわち,複素構造が変形できない場合が多い.この問題を克服するべく,T-varietyと呼ばれるトーリック多様体を包括するより広い観点から問題設定を行い,δ不変量や標準ケーラー計量といったケーラー幾何学の重要な研究対象が, T-varietyに付随する多面体の言葉でどのように記述されるかについて考察を行う.またトーリックファノ多様体におけるExtremal軽量の存在問題については, (1) GIT-安定性を用いた判定法による軽量の存在確認 (2)存在する場合はトーリックケーラーポテンシャルを使った具体的な計量表示といった双方から考察する.
|
Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策においても述べたように, (1)複素3次元カラビ-ヤウ多様体のスムージング理論の確立,及び微分同相性に関する共同研究プロジェクトを実行するためのHongik大学(ソウル)への滞在渡航費用, (2)トーリックファノ多様体上でのExtremal計量の存在問題に関する研究課題を推進するためのUQAM(カナダ,モントレオール)への訪問研究費が大きな使用目的として挙げられる.また(3) T-varietyを用いた複素構造変形理論の開発のためにベルリン自由大学(ドイツ)に訪問研究するための研究資金としても充てる予定となっている.これらの研究計画は前年度から実行予定だったものも含めて延期されているものも含まれているが,パンデミックが収束し,海外渡航が可能になり次第,アジア圏近郊から徐々に欧州へと国際共同プロジェクトを実行し,研究成果の実現を目指す.
|
Research Products
(5 results)