2020 Fiscal Year Research-status Report
Geometric structure of Weil-Petersson metric on infinite dimensional Teichmuller space
Project/Area Number |
18K13410
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳下 剛広 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (60781333)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Weil-Petersson計量 / タイヒミュラー空間 / 擬等角写像 / リーマン面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は無限次元タイヒミュラー空間上のWeil-Petersson計量の幾何学的性質を明らかにすることを目的とする. タイヒミュラー空間とは標識付きリーマン面の変形空間である. 特に, リーマン面がコンパクトでない場合, その空間の次元は無限となる. また, Weil-Petersson計量とは元来有限次元タイヒミュラー空間上で定義される標準的なエルミート計量のことである. 無限次元においては2乗可積分タイヒミュラー空間という, タイヒミュラー空間の部分空間上においてWeil-Petersson計量が定義できる. 近年, 有限次元の場合のWeil-Petersson計量の重要な性質(曲率の負値性など)と同じ結果が無限次元においても得られており, 本研究はその流れの中に位置する. 本年度は前年度の成果を異なる観点から一般化した結果を得た. それは p乗可積分タイヒミュラー空間と呼ばれる, 2乗可積分タイヒミュラー空間の一般化の上で定義される p-Weil-Petersson 計量の非完備性である. 主な証明方法は前年度のものと同様で, Lehner 条件を満たすリーマン面を円環領域となるように切り開き, その手法に付随する Jenkins-Strebel 微分を用いる. さらにその正則2次微分を用いてベルトラミ係数を構成する. 無限次元タイヒミュラー空間では, その構成の際にコンパクトな部分集合の外側でベルトラミ係数の値を0とする cut-off を行う必要が生じる. 前年度ではシュワルツの不等式を用いてノルム評価を行っていたが, それをヘルダーの不等式に置き換えることで該当の結果を得られた. 本研究成果は学術論文にまとめ学術誌に現在投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はコロナウイルスの甚大な影響によりあまり実りのないものとなってしまった. 大学では全面的にオンライン上での授業を行うこととなり, そのような形態の授業経験がなかったためそちらの方に多大な時間を割くこととなった. このため当初予定していたエフォートのバランスが大きく崩れ, 結果的に本研究には10%程度しか注力できなかった. また, 当初の1つ目の研究課題については現在も研究できる方針が見つかっていない状態である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究発表の機会もほぼなかったため, 今後のコロナウイルスの流行状況にもよるがまずは上記の成果を日本数学会主催の研究集会などで幅広く発表することが第一である. また, 1つ目の研究課題について関連する論文や参考書を参照し打開策を模索したい.
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの甚大な影響により, 研究集会の度重なる中止および大学教育へのエフォートの傾注が生じた. このため, 当初の使用計画よりも大幅に使用額が減少することとなった. 次年度までの再延長許可をいただいたので, 次年度では物品費および研究打ち合わせ, 成果発表での旅費として使用する予定である.
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