2018 Fiscal Year Research-status Report
三次元多様体のオープンブック分解からみた結び目の負値性
Project/Area Number |
18K13416
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
田神 慶士 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (60778174)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 結び目 / オープンブック分解 / 接触構造 / フラットプラミングバスケット |
Outline of Annual Research Achievements |
三次元球面に埋め込まれた円周を結び目といい、埋め込まれた円周がいくつかあるときは絡み目という。任意の向きづけられたコンパクト3次元多様体は適切な絡み目をその多様体から除くことで、円周上のある曲面束の構造を持つ。これをオープンブック分解という。オープンブック分解が与えられたとき、あるファイバーを一つ固定し、その境界にバンドを取り付けると新しい曲面が得られる。特に、各バンドがそれぞれ異なるファイバーの上に乗っているとき、できる曲面をフラットプラミングバスケットという。例えば、三次元球面から何も結ばっていない結び目を除くと残りはソリッドトーラス(中身の詰まったトーラス)となるので、これは一つのオープンブック分解を与える。これをディスクオープンブックという。ディスクオープンブックのファイバーはディスクである。 Furihata-Hirasawa-Kobayashiによりどんな絡み目もあるディスクオープンブックのフラットプラミングバスケットの境界として実現できることが示されている。そこで興味の対象となるのが、与えられた絡み目に対し、その絡み目を境界に持つフラットプラミングバスケットのバンドの数の最小値はどのように求めればよいか、という問題である。その最小値をフラットプラミングバスケット数と呼ぶ。 本研究では、フラットプラミングバスケット数と、対応するオープンブック分解から定まる三次元多様体の接触構造の関係を記述することを目標とする。 当該年度は研究の基盤となる、フラットプラミングバスケット数と絡み目の最大自己絡み数に関する不等式(sl-fpbk不等式)の完成を目指した。本研究申請段階で証明の目処は立っていたが、その後、より簡潔かつ図式的な証明に修正することができた。さらに、いくつかの結び目のクラスについてはこの不等式を使ってフラットプラミングバスケット数を決定できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究により、sl-fpbk不等式の証明の簡略化を与えることができた。さらに、トーラス絡み目についてsl-fpbk不等式からフラットプラミングバスケット数を決定できた。 しかしながら、当初の目標の一つであった、強擬負絡み目についてsl-fpbk不等式の等号が成立するかという問題については、12交点までの結び目については正しいことが確かめられたが、一般に正しいかについては未解決である。もう一つの目標であった、一般のオープンブック分解に関するsl-fpbk不等式については、証明の方針は立っているが、技術的に難しい点があるため、今のところ証明には至っていない。 以上の理由により、現在までの進捗状況はやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まずは基盤となるsl-fpbk不等式に関する最初の論文の出版を目指す。また、強擬負性がsl-fpbk不等式の等号を誘導するか、という問題については交点数が少ないところでは反例が見つからなかったため、より大きな交点数を持つ強擬負結び目について考察を行う。その際に、実際にフラットプラミングバスケットを構成する必要があるため、より少ないバンド数でフラットプラミングバスケットを構成するテクニックの開発も同時進行で行う。また、フラットプラミングバスケット数を実現するフラットプラミングバスケットを村杉和分解したときに、各因子が再びフラットプラミングバスケット数を実現するか、という加法性に関する問題についても取り組む。
|
Causes of Carryover |
所属研究機関の変更に伴う私事により、年度末に予定していた出張を取りやめたため使用額が予定額を下回った。次年度使用額は、新所属機関でのプリンタおよびパソコン周辺機器の購入に充てる。
|
Research Products
(1 results)