2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K13420
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
梶ヶ谷 徹 東京電機大学, 工学部, 助教 (20749361)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハミルトン安定性 / 複素双曲空間 / ラグランジュ部分多様体 / 離散調和写像 / 双曲閉曲面 / 重み付き有限グラフ |
Outline of Annual Research Achievements |
群作用による不変性を持つ部分多様体に対し, その体積汎関数やエネルギー汎関数に関する安定性について研究を行ない, 主に以下の研究成果を挙げた: (1) 複素双曲空間内のハミルトン安定トーラスについての研究: 古典的な空間形内の等周不等式の1つの一般化として, 負曲率空間の典型例である複素双曲空間において, トーラス作用によるラグランジュ軌道のハミルトン安定性および体積最小性を考察した. 結果として, 平坦および正のリッチ曲率を持つ空間内のトーラスの場合と状況が異なり, 不安定トーラスが無数に現れる一方で軌道空間のある種の重心に位置するトーラス軌道が際立って安定性を示すこと, ほとんど全てのトーラス軌道は体積最小性を有しないことを証明した. また, 証明においては, シンプレクティック微分同相を用いてユークリッド空間内で解析を行うと言う新しい計算手法を実装した. この研究成果はarXivにて公開した. これまで, 双曲計量に対してのハミルトン安定性についての研究はほとんど存在しなかったため, 本研究によりその様相が徐々に分かってきた. また技術的にも1つの新しい方法を提案できたと考えている. (2) 離散調和写像による双曲曲面の一意化についての研究: 本研究は田中亮吉氏(東北大学)との共同研究である. 重み付き有限グラフから閉双曲曲面への離散調和写像を考え他時, 固定した写像のホモトピー類と双曲計量全体の中にディリクレエネルギー最小となる調和写像と計量の組が存在し, それは(適当な同一視の元)一意的であることを示した. また重み付きグラフにある種の対称性のある場合に, その具体的な写像と計量の例も与えた. 本研究成果については, 現在投稿に向け最終調整中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り, 複素双曲空間内のラグランジュトーラスについてハミルトン安定性を調べ論文としてまとめることができた. 計画時点での予想とは異なるが, トーラス軌道について示唆に富む結果が得られたこと, 複素双曲空間の幾何学について理解が進んだこともまた今後の研究に役に立つと考えている. 離散調和写像に関する研究は, 当初の研究計画には明示しなかった問題であるが, 当該研究とも親和性の高い問題であり, 共同研究者の協力のもと, 想定以上の良い結果としてまとまった. 当初の計画やこれまでの自身の研究では取り扱うことの少なかった多くの知識と技術を学び応用することができたと言う点で, 今後の研究にも広く影響するものと考えている. 一方で, 当初の計画における等質部分多様体の分類問題やその他の空間(特に正のリッチ曲率を持つ空間)におけるラグランジュ部分多様体の安定性解析などの問題については, 時間的に手をつけることができていないため, 次年度以降しっかりと時間をかけて取り組んで行く.
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Strategy for Future Research Activity |
等質部分多様体の分類問題に関連して, 様々な群作用の軌道の幾何について考察したい. 非コンパクト群作用も視野に入れると, その種類は豊富であり, 軌道や軌道空間の幾何もまた様々な様相を持つと考えられる. 等質部分多様体を適切に分類するためには, それらについてよく知っていることが望ましく, この点を踏まえて様々な群作用に対する軌道の幾何について, トーリック幾何などを参考に重点的に調べる. 同時にこれらの群作用の軌道に対し特別な軌道の存在やその安定性解析が可能かどうかも検討する. また, 複素射影空間および双曲空間内の等質部分多様体の分類問題と極小等質ラグランジュ部分多様体の安定性に関する予想に向けて, 先行研究を勉強しながらアプローチを試みる.
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Causes of Carryover |
計画当初購入を予定していた数式処理ソフトウェアを購入する必要がなくなったため. 次年度は海外出張等による旅費が必要になる予定であるため, 剰余分は旅費として使用する.
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Research Products
(8 results)