2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of statistical mechanical models evolving in random media
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18K13423
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 誠 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (60635902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | KPZ方程式 / 確率熱方程式 / Edwards-Wilkinsonモデル / ランダム媒質中のディレクティドポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
KPZ方程式というランダムな界面成長を記述する非線形な確率偏微分方程式は非線形項とノイズの効果で不適切であることが知られている. しかし空間次元が1次元の場合はBertini-Giacominが線形な乗法的確率熱方程式に対してCole-Hopf変換を適用することで方程式に適切な繰り込みを付け加えた形でKPZ方程式の解の意味づけに成功した. 一方で高次元のKPZ方程式はこの理論を直接適用できない. 2020年度は高次元のKPZ方程式の解析を行った. 手法としてはBertini-Giacominの手法に倣ってノイズを空間方向にパラメータεで正則化した乗法的確率熱方程式のCole-Hopf解を考えた. 特にノイズの強さもεに依存する形で弱める方程式の解とその期待値のからの摂動を調べることにした. その結果Cole-Hopf解によって構成される場の摂動は適当なスケールによりある線形な加法的確率熱方程式の解に収束することを証明することに成功した. このような研究は行われていたが初期値は定数関数のものに限られており, その場合は極限はEdwardsーWilkinson方程式の解になっていたが今回の結果で得られる方程式に初期値の影響が現れることが明らかになった. これはC. Cosco氏(Weizmann Institute of Science), 中島秀太氏(University of Basel)との共同研究である. また強再帰的なグラフ上でランダム媒質中のディレクティドポリマーの自由エネルギーの解析を行った. この研究では高温度での自由エネルギーの挙動がグラフのある種の局所的な情報が自由エネルギーの挙動を支配することが明らかになった. これは梶野直孝氏(神戸大学当時)とその学生の小西航生氏との共同研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
KPZ方程式の解析に関しては, これまで初期値が一般の場合には一切研究がなされておらず極限はEdwards-Wilkinson模型というよく知られた確率偏微分方程式となっていたが2020年度の結果により初期値の影響が明らかになったことは非常に重要な結果でありここまで予想以上の成果である. また収束が成り立つと予想されていたパラメータの劣臨界領域での収束も証明することができたことは当初の予定通りである. また一般のグラフ上のディレクティドポリマーの解析においても当初は熱核の挙動が良い性質を持っている仮定の下での解析の予定からさらに進展して条件を弱めることができたことは当初の計画以上の進展であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
KPZ方程式の解析では線形な乗法的確率熱方程式の解析を行っていた. その手法はFeynman-Kacの公式と時間反転によるマルチンゲール表現を経由し伊藤の公式を適用することで可能であった. しかしノイズにかかる項を一般の関数で置き換えるとFeynman-Kacの公式が適用できずこれらの理論が適用できない. そこで確率解析の手法を用いた解析を行うことで一般の確率偏微分方程式のCole-Hopf変換に関する摂動を求める. また一般のグラフ上のディレクティドポリマーの解析についてはまずはそのスケール極限として得られるであろう確率熱方程式の構成を行う. その手法はユークリッド空間であれば確立されているが, 今後の応用のためにより強い局所一様収束の意味で極限を求める
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により当初予定していた出張が全て実行できなくなり使用計画に多大な影響が出た. 2021年度は研究を遂行上必要な図書や計算機およびその周辺機器を購入する予定である. また2021年度後半にはコロナの影響の減少を見越しある程度の出張も行う予定である.
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Research Products
(4 results)