2019 Fiscal Year Research-status Report
On trace of Brownian motion and related models from statistical physics
Project/Area Number |
18K13425
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白石 大典 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00647323)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 一様全域木 / スケール極限 / ランダムウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、3次元一様全域木のスケーリング極限の存在示した。また、スケール極限の諸性質を明らかにした。具体的には、以下のことを証明した。 (1) スケール極限の(内在的距離に関する)ハウスドルフ次元がループ除去ランダムウォークの成長指数で与えられること。(2) スケール極限の中から無限遠に向かうふたつの単純曲線を任意に取り出した時、それらは必ずどこかで合体すること。(3) スケール極限は木であり、最大次数は確率1で3となること。(4) 球のボリュームに関する詳細な評価。(5) スケール極限の内在的距離は、2000年にOded Schrammによって導入されたSchramm距離と同値であること。
また、一様全域木の有効抵抗の評価を与え、上記のボリューム評価と合わせて、一様全域木の上のランダムウォークの研究を行った。具体的には、一様全域木の内在的ウォーク次元、外在的ウォーク次元、スペクトル次元といった、ランダムウォークを通して定義されるフラクタル次元を、ループ除去ランダムウォークの成長指数を用いて記述することに成功した。さらに、この方向の研究を押しすすめることにより、一様全域木の上のランダムウォークの(時空に関する)スケール極限の存在を証明することができた。また、ランダムウォークのスケール極限に対しても、熱核の詳細な評価を与えることができた。
上の研究結果を、国内外の研究集会およびセミナーで発表した。そこでの議論を通して今後の明確な目標を立てることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一様全域木は、パー子レーションやイジングモデルなどと同じ範疇に属する統計物理モデルである。これらの統計物理モデルを、3次元において数学的に厳密に取り扱えるようになることは、当該分野の夢であるといえる。しかしながら、現状はまだまだ不明瞭な部分が多く残されており、手が出せない状態にある。そうした状況の中で、3次元一様全域木に対して、上記のような研究結果を出したことは、大きな第一歩を踏み出せたと言って良い。実際、上記の研究の中で、他のモデルの研究でも適用可能な手法もいくつか確立している。一様全域木の研究を推し進めることにより、普遍的な理論を構築できるものと期待している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題としては、得られている結果をさらに改良することである。その余地は十分に残されており、現在改良を与えるべく研究を進めている。これまでの研究では、スケール極限を考える際に、メッシュのサイズは全てdyadicなスケールで取っていた。これは技術的な理由によるものである。当面の目標は、これを一般のスケールに変更することである。一見、この変更は困難なく行えそうに思えるかもしれないが、実は大変な仕事であることを知らしめることができるのではと期待している。
|
Causes of Carryover |
COVID 19の影響により、購入予定であった計算機器類の納品が大幅に遅れたため、当初の予定通り使用することができず次年度使用額が生じた。開催予定だった研究集会の中止や延期が相次いでおり、今年度もこの影響を大きく受けるものと推測される。影響が緩和されて自由に移動できるようになったときに、集中的に出張を行おうと考えている。また、購入できなかった計算機器類の購入も予定している。
|