2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13427
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神本 晋吾 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 講師 (10636260)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リサージェンス理論 / 完全WKB解析 / Borel総和法 / Mould解析 / Stokes現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,主に以下の1),2)について研究を行った. 1)WKB解のリサージェンス性について 令和2年度に引き続き,WKB解のリサージェンス性について考察を行った.令和3年度は David Sauzin 氏と Frederic Fauvet 氏と月に2回程度のペースでセミナーを行い研究を進めた.主にWKB解の対数微分に対応する Riccati 方程式の解のリサージェンス性について,tree による mould 展開を用いて議論を行った.帰納法のプロセスを工夫することにより,この展開の各項のリサージェンス性については,とても良い形で結果を得ることができた.Riccati 方程式の解のリサージェンス性についても,長い間未解決の状態であったが,完全な解決まで残すはこの展開の収束性のみという状況となった.また,この手法はWKB解にも適用可能であるため,WKB解のリサージェンス性についても今後大きな進展が期待できる. 2)Connes-Kreimer Hopf 代数を用いた mould 解析について 令和2年度に引き続き,Connes-Kreimer Hopf 代数を用いた mould 解析によりベクトル場の Poincare-Dulac 標準形への変換級数のリサージェンス構造の解析を行った.解析関数芽の合成積の大域解析に関する枠組みを,特異性の合成積に拡張することにより,Borel 平面上の特異点が「単純」とは限らない一般の場合にも,特異点の構造を明らかにし,そこでの alien 微分の計算を行った.この問題に関しても,残るは mould 展開の収束性のみとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Riccati 方程式の解のリサージェンス性については,当初は mould 展開の各項のリサージェンス性についても良くわからない状況であった.これに関して明確な解答が得られたことはとても大きな進展であり,問題の解決に向けて見通しが立ったため.また,ベクトル場の Poincare-Dulac 標準形への変換級数のリサージェンス構造の解析についても,解析の本質的な部分が完了したため.
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Strategy for Future Research Activity |
1)WKB解のリサージェンス性について 問題となっている mould 展開の収束性を示すためには,解析接続をする際に用いる積分表示の積分領域の評価が必要となり,これが Riccati 方程式の解のリサージェンス予想の解決のための最後の難関となっている.これに関しては,まだ明確な解決策は得られていないが,考察を重ね,令和4年度中の解決を目指したい.また,WKB解のリサージェンス性についても同様の手法が適用できると期待しているが,特異点の細かなシート構造まで捉えることが可能かは定かではない.Stokes 現象の解析まで込めた包括的な解析は今後の課題とし,まずはWKB解のリサージェンス性の証明に注力したい. 2)Connes-Kreimer Hopf 代数を用いた mould 解析について Poincare-Dulac 標準形への変換級数の mould 展開の収束性については,特異性の合成積の解析を改めて行わなくても,解析関数芽の合成積に関する結果を上手く用いれば示せるのではないかと期待している.この収束性についても,令和4年度中の解決を目指したい.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により,計画通りに出張が行えず,次年度使用額が生じた.これについては,オンライン会議や論文執筆のための計算機の購入や,国内出張のための旅費として使用する.
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