2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13429
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
阿部 圭宏 千葉大学, 大学院理学研究院, 講師 (50814109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 局所時間 / 離散ガウス自由場 / ガウス乗法カオス / 被覆時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元格子上の単純ランダムウォーク(SRW)の局所時間の統計的性質を詳しく調べた. 局所時間とはSRWが各点に滞在する累積時間である. 特に局所時間が最大値の定数倍の値をとる点 (thick point), 最小値の定数倍の値をとる点 (thin point), 定数値をとる点 (light point), ゼロの点(avoided point)の統計を解析した. これらの点の統計はいずれも2次元量子重力測度という, 2次元領域上のランダム測度により特徴づけられることをMarek Biskup氏(UCLA)との共同研究により明らかにした. 本研究に関する論文を執筆し, 学術誌に投稿した. この2次元量子重力測度は, 例えばBiskup-Louidor(2018)により2次元離散ガウス自由場の極大値統計を特徴づけるものとして知られており, 様々な2次元離散モデルの極値統計を特徴づけるような普遍的なものだろうと信じられている. 本研究では局所時間の極値統計に対してその予想を肯定的に解決した. 本研究では, thick, thin, avoided pointの周辺の統計も調べた. Thick pointとthin pointの周辺の統計は原点でピン止めされたガウス場とポテンシャル核と呼ばれる離散調和関数の和で特徴づけられることを明らかにした. なお, 2次元離散ガウス自由場の極大値をとる点の周辺も同様な統計を持つことはBiskup-Louidor(2018)により知られていた. 一方, avoided pointの周辺の統計はComets-Popov-Vachkovskaia (2016)により導入された2次元random interlacementと呼ばれる, 2次元格子上の1点を避けるSRWパスの集まりの局所時間により特徴づけられることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元格子上の単純ランダムウォークの局所時間の極値統計が, 2次元離散ガウス自由場の極大値統計と同様に, 2次元量子重力測度で特徴づけられるだろうという予想を解決する当初の目標がある程度達成されたから.
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Strategy for Future Research Activity |
今までに実施した2次元単純ランダムウォーク(SRW)の局所時間の極値統計の研究では, SRWが境界に到達したら次のステップでは境界上の一様分布から出発する, という人工的な条件をつけた. 今後はより自然な境界条件, 例えば周期境界条件(つまり離散トーラス)に対して局所時間の極値統計を調べる. また, 今まで実施した研究ではSRWを走らせる時間は, 境界での滞在時間をもとに径数づけられたランダム時間で与えていた. 非ランダムな時間だけ走らせたSRWに対しては, ランダム時間だけ走らせたSRWとは異なる結果が得られると予想されるので, 今後は非ランダム時間だけ走らせたSRWに対して局所時間の極値統計を調べる. 上記の研究を共同研究者であるMarek Biskup氏(UCLA)を訪問して進める.
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Causes of Carryover |
当該研究に関連する共同研究者であるMarek Biskup氏(UCLA)を当該年度に訪問予定だったが, 先方と研究代表者の都合があわず, 実現できなかった. 先方への訪問を次年度に延期したため次年度使用額が生じた. 次年度ではそれ以外にも研究成果発表および当該研究に関する情報収集を目的とした海外出張・国内出張を計画おり, その旅費として助成金を使用する予定である.
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