2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13431
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
伊藤 悠 京都産業大学, 理学部, 助教 (70779214)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラフパス / 複素解析 / 非整数階微分 / 非整数ブラウン運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はラフパス理論の基礎研究に取り組み、ラフパス理論の線積分概念であるラフ積分について研究成果を得た。 研究代表者はこれまで、非整数階微積分に基づいたラフパス理論の研究に取り組んできた。本研究では、これまでの研究を複素解析の視点から見直し更に推し進めたいと考えている。 研究代表者のこれまでの研究では、幾つかのラフ積分に対して、非整数階微分作用素を用いた明示的な表現式が得られた。このようなラフパス理論の基礎概念に対する明示的表現は、ラフパス理論及びその応用研究に対して、より直接的な解析手法を提供することが期待される。しかしながら、上述の非整数階微分作用素による表示式の定量評価に関する詳しい研究は遅れている。また、Lyonsの拡張写像、ラフ微分方程式の解写像などといった基礎概念に対する、通常のラフパス理論及び関連する先行研究が与えた定量評価との比較は重要な問題である。 本年度は、非整数階微分作用素を複素解析の枠組みに乗せる幾つかの標準的方法を用いて、ラフ積分の精密な定量評価を与える表示式の導出に取り組み、以下の研究成果を得た。 まず、これまでの研究とは異なる方法により、Lyonsの拡張写像に用いられるラフ積分の非整数階微分作用素による表示式の導出に成功した。この方法により、これまでの研究で置かれていた仮定が弱まり、通常のラフパス理論と同様の仮定の下で表示式が導出された。この研究成果については学術雑誌に掲載が決定した。次に、この方法を更に推し進め、ヘルダー指数が1/4より大きい場合に被制御パスに関するラフ積分の非整数階微分作用素による表示式の導出に成功した。この結果は、ヘルダー指数が1/4より大きい場合にラフ微分方程式の定式化を可能にするとともに、非整数ブラウン運動など重要な対象を含み応用上も意義ある結果だと考えられる。この研究成果については国内研究集会で発表し投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則った研究活動を行い、幾つかの意義ある研究成果が得られた。これらの研究成果について複数の招待講演を行った。また、これらの研究成果の一部は査読付き論文として学術雑誌に掲載が決定した。以上より、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続き複素解析の視点からラフパス理論の基礎研究に取り組み、本研究を推し進める。また、当初想定しなかった展開があれば、本研究の方向性について柔軟な対応をとることで、研究遂行に支障をきたさないよう努める。
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Research Products
(4 results)