2018 Fiscal Year Research-status Report
準線形偏微分方程式とその自由境界問題に対する粘性解理論及びその応用
Project/Area Number |
18K13436
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
小杉 卓裕 福岡工業大学, 工学部, 研究員 (80816215)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 粘性解 / 障害物問題 / 完全非線形偏微分方程式 / 平均曲率流方程式 / ロボティクス / 制御工学 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフの平均曲率流を含むような完全非線形放物型偏微分方程式の障害物問題に対して,特異摂動およびペナルティ法による近似解を考え,その近似解の収束率を非線形随伴法を用いて示した.特にその近似解の収束先は元の障害物問題の粘性解となる.随伴問題に現れるグリーン函数と近似解の,ある種の可積分性を示すことで,近似解のパラメータ微分の有界性が得られ,それにより収束率を得ることができる. 特異楕円型方程式に対する粘性解は正則性理論でよく用いられる定義と,レベルセット平均曲率流方程式に対する粘性解の拡張の楕円型版の定義の二つが考えられるが,その同値性をLp粘性解の範囲で示した. ロボティクスへの応用を念頭においた人間の運動メカニズムの解析の一つとして,指先を模した1リンク2筋骨格システムに対するフィードフォワード位置決め制御可能性を,微分方程式論を応用して示した.EP仮説や仮想軌道仮説は生物の運動はフィードフォワード制御を有効活用していると示唆しており,人間が持つ筋骨格システムはフィードフォワード制御可能な条件をみたしていると考えられる.今回は,フィードフォワード制御方法として,目標位置での釣合い力をステップ入力で与え,システムが目標位置へ漸近収束するための十分条件を調べた.より具体的には,そのフィードフォワード制御による運動方程式が微分方程式として与えられるため,リヤプノフ安定性理論を用いて,目標位置が漸近安定な平衡点であることの十分条件を求めた.また,ここで得られた十分条件をみたす条件の下での数値シミュレーション結果及び,実機実験結果を得た.さらに,筋配置によっては不安定になることも示した.特に,筋骨格システムはその背景により可動範囲が決まっており,障害物問題として微分方程式が与えられるが,シミュレーションで用いられる方程式はペナルティ法から得られる近似方程式である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘性解の正則性理論は強解の意味を弱めたLp粘性解の概念に対して行うのがより一般化に近いが,そもそも特異性をもつ偏微分方程式に対して定義されていなかった.また数値計算で用いられるペナルティ法による近似解の収束率や,実際にペナルティ法による近似解を用いたシミュレーション結果を得るなどしたため,粘性解の正則性理論や自由境界問題に関する研究に対して進展があったと考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
平均曲率流方程式の障害物問題に対して,ペナルティ法による近似方程式を評価し,解の漸近挙動と障害物の挙動の関係性について調べる.また,逐次近似法により,近似解を具体的に表示することで収束率の最適性を示す. qラプラシアンのような特異あるいは退化楕円型方程式に対する粘性解のABP最大値原理や弱ハルナック不等式を示すことを目指す. ゲーム論的qラプラス方程式のエルゴード問題を考え,解の極限函数の特徴づけを行う. 藤田型方程式の完全非線形版に対する藤田指数について調べる.そのための前段階として,主要部に一階微分項を含むような完全非線形方程式の解が存在するクラスを調べる. 筋骨格システムに関し,これまでの研究では筋が持つとされる粘弾性を無視していたが,これを考慮したうえで,フィードフォワード位置決め制御を考え,それを数学的に解析する.
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Causes of Carryover |
年度途中で使用中のパソコンが不調になっており,来年度助成金は相対的に少ないので,購入費用の一部に充てることがあり得ると考えた.また,所属機関が福岡県という地理的な都合上,未使用額では共同研究のための旅費としても中途半端であったため,次年度請求額と併せて使う方が共同研究を進める上で有効的であると考えた.これらを考慮し,次年度請求額と併せて使用する.
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Research Products
(14 results)