2020 Fiscal Year Research-status Report
非圧縮性粘性流体の領域摂動に関する諸問題の数理解析
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18K13439
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
牛越 惠理佳 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (20714041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストークス方程式 / 固有値問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
領域摂動に対する固有値の摂動について研究を遂行した.具体的には,体積を保存するような領域摂動に対する非定常ストークス方程式の基本解のアダマール変分公式の導出である.牛越(2016)の一連の結果により,ディリクレ境界条件を課した定常ストークス方程式のグリーン関数に対する変分公式はすでに導出されている.その際に,領域摂動のパラメータに関する一様評価により,補正項の領域依存性を解析するのが鍵になっていた.しかし非定常ストークス方程式の問題については,楕円型作用素に対して成立する性質を直接的に用いた解析が行えないため,一様評価の導出が困難であった.そこで本問題については,熱方程式の基本解に対する変分公式について考察された小沢(1982)で用いられた手法を用いて,基本解の領域依存性について言及した.また,関連する研究として,定常ストークス方程式の変分公式について,境界の正則性についてより詳細な議論を行った.具体的には,領域の正則性とディリクレ境界条件を課したラプラス方程式のグリーン関数に対するアダマール変分公式の導出について考察した鈴木-土屋(2016)の手法を土台に,ストークス方程式の場合の領域の正則性について考察した. 最後に,断面が非一様な弾性体の変形に対する固有振動の漸近解析について研究を行った.神保-Rodriuez Mulet(2020)により,3次元弾性体の両端を固定した場合と,弾性体の一方だけを固定するといった,それぞれの状況で,その3次元弾性体が等方的にとても細い針金に漸近するときに,固有値がどのような振る舞いをするかが考察された.同様の状況で,3次元弾性体について,とても細い針金への漸近の仕方に自由度を与えた場合に,固有値の漸近挙動がどうなるかということを考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
領域摂動問題については,これまで定常のストークス方程式についてのみを研究対象としてきており,非定常ストークス方程式の領域摂動問題について言及するに至っていなかった.ここで小沢(1982)による手法を適用できることを確認できたことは,これから非定常ストークス方程式の領域摂動問題を扱う基盤となると考えている.また,3次元弾性体の変形の方法に自由度を与えた場合のラメ方程式の固有値の特徴付けに関しては,既存の研究である神保-Rodriuez Mulet(2020)の一般化となっており,新しい知見を得られたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
非定常ストークス方程式について,領域の体積を保存するような摂動を考察したが,一般の正則な摂動に対する領域摂動問題について考察する.また,変分公式の導出には大変煩雑な計算処理を余儀なくされた.そこで,基本解の領域依存性の解析手法の改善による導出方法の簡略化は,高次変分の導出の際には必要不可欠であるといえる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染防止の観点より,例年開催されている研究集会への参加,および領域摂動問題の専門家である共同研究者との対面での打ち合わせの機会が失われた.今後の状況を鑑み,研究打ち合わせや研究成果の発表方法について適切な方法を考えながら研究を遂行していく.
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