2018 Fiscal Year Research-status Report
対数型スケール変換が拓く関数不等式の新展開と偏微分方程式への応用
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18K13441
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
猪奥 倫左 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (50624607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非線形スケール不変性 / q-対数関数 / 非一意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
球上でスケール不変性を持つSobolev型不等式と,非線形項が指数増大度を持つ場合の半線型放物型について研究し,以下の成果を得た. 通常のSobolev不等式は有界領域上では伸縮不変性の破綻に起因して最良定数はエネルギークラスでは達成されない.本研究では,球上で非線形スケール不変性を持つSobolev型不等式を導出し,その最良定数に関連する変分問題の解を明示的に求めた.証明の核心を担う非線形スケール不変性はq-対数関数を用いて記述される.また,得られた結果を一般化し,可積分性と微分項の両方に重み関数を持つ,非線形スケール不変なCaffarelli-Kohn-Nirenbergの不等式へと拡張した.これはSobolevの不等式,Hardyの不等式,Sobolev-Hardyの不等式を含む.得られた拡張から,可積分指数を空間次元に近づける極限によって,Alvinoの不等式(またはRadial Lemma)が得られることを証明した.また,Talenti関数からMoser列が直接極限によって得られることがわかった. 非線形項が指数増大度を持つ場合の半線型放物型方程式について,特異定常解を境にして次の3状態が現れることを証明した:1.滑らかな解の一意存在,2.滑らかな解と特異解の存在(非一意性),3.解の非存在.特に2の非一意性は,3次元以上で得られていたNi-Sacksの結果の2次元版とみなせる結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツァリス統計力学とボルツマン統計力学の関連から着想を得て,対数型特異性を伴う臨界Sobolevの不等式(Alvinoの不等式)を直接極限として持つ形のスケール不変Sobolev不等式を導出した.これは当初の研究計画の第一弾を証明したものである.さらに,関連する臨界問題の一つである指数型非線形項を持つ2次元半線型熱方程式について,高次元の場合に得られていた結果と同等のものを証明した.以上の理由から,計画は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画が順当に進行しているため,今後も当初計画に沿って研究を推進していく.具体的には,スケール臨界の問題を劣臨界問題の連続極限として記述して解析する手法を確立する.Alvinoの不等式を連続極限として記述することに成功したため,今後はAlvinoの不等式と類似性を持つTrudingerの不等式について研究する.
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの支出を行なったが,物品費として若干の差額が生じた.繰り越した13423円は翌年度の図書代として有効に活用する.
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