2018 Fiscal Year Research-status Report
非線形分散型方程式の幾何学的対称性と共鳴現象の解析
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18K13442
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
加藤 孝盛 佐賀大学, 理工学部, 講師 (50620639)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分散型方程式 / 初期値問題 / 非線形 / 可積分系 / 調和解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
線形化方程式の解の摂動として捉えられない非線形相互作用を持つ非線形分散型方程式に対する初期値問題の適切性に関する研究を行ってきた.特にKdV階層などの可積分系とよばれる高い対称性を有する高階の非線形分散型方程式を研究対象としている.これまでの研究を通じて非線形方程式の解のflowとの線形近似とのずれは, 共鳴部分に集約されることが分かってきた.一方で可積分系が持つ対称性を利用することで共鳴部分は, 保存則で明示的に記述することが多く, 実際にその性質を利用することで5次KdV方程式などの適切性を解明した. 前年度はBenjamin-Ono(BO)階層に属する2番目の方程式である3次BO方程式の初期値問題を周期境界条件下で考え, その適切性を解明した.本問題の困難な点は次の2つである. KdV階層とは異なり, 線形部分の微分階数と非線形項のそれの差が1階しかない半線形型方程式であるため, 非共鳴部分でさえも分散構造を反映させた平滑化効果を引き出すことが難しい. また(2次)BO方程式と比較すると, 解写像を0解の周りでTaylor展開した際に低次だけではなく3次以上の高次近似にも共鳴部分が現れるため, それを明示的に抽出することが困難である. これらの問題を克服するため, まず適当なゲージ変換を用いることにより, 本質的に線形部分の微分階数と非線形項とのそれとの差を2階になるように方程式を変形する. そして変換後の方程式が可積分系であることに注意し, 複数個の保存則を利用した非線形変換を行うことで共鳴部分を相殺する. 残りの非共鳴部分は線形の摂動と捉えることができ, エネルギー空間における時間大域的適切性を証明することができた. またこの手法は,可積分系であり半線形型方程式の4次微分型シュレディンガー方程式の初期値問題に応用することができ,その適切性を解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の最終的目標は, 線形方程式の解の摂動として捉えられない半線形型の非線形分散型方程式の代表例であるBenjamin-Ono階層及び微分型シュレディンガー階層に属するすべての方程式に対する初期値問題の適切性を解明することである。特にエネルギー空間での時間大域的適切性を証明することを目標とする。その手始めとして階層に現れる2番目の方程式である3次Benjamin-Ono方程式および4次微分型シュレディンガー方程式に対し, エネルギー空間で時間大域的適切性を解明でいたため, 研究の進行状況は順調と判定した.
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Strategy for Future Research Activity |
3次Benjamin-Ono方程式や4次微分型シュレディンガー方程式の適切性理論の構築により, 偏微分方程式論観点からみれば, ある程度道具が整備されたと考える. それぞれの階層に属する一般の次数の方程式には, 上述で述べた手法とLax pairが持つ代数的な側面を抽出する手法を上手く組み合わせることにより, その適切性を解明する。
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Causes of Carryover |
昨年度学内の改組が行われ, それに伴う業務が多かったため, 予定していた海外出張に行くことができなかった. また国内出張に関しては, 若手研究者を対象に佐賀大学から研究費を支援して頂けたため, それにより補填することができた. 余った予算は今年度開催予定の研究集会「Saga Workshop on PDE 」および「PDE Workshop in Miyazaki」の運営費として用いる.
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Research Products
(4 results)