2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K13443
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
曽我 幸平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (80620559)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非圧縮性Navier-Stokes方程式 / Leray-Hopfの弱解 / 差分法 / 時間周期解 / 安定性解析・分岐解析 / 弱KAM理論 / Hamilton-Jacobi方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、応用解析的アプローチによって、力学系および流体力学に関する定性的・定量的な結果を追求することである。
Chorinは、3次元トーラス上の非圧縮性Navier-Stokes方程式に対して、C^5級の解クラスで収束する差分法を提案した。本研究を通して、Chorinの方法を一般化し、3次元有界領域上のLeray-Hopfの弱解のクラスで収束する差分法を得た。この結果を論文としてまとめ専門誌に投稿した。また、この差分法をより精密化し、時間周期的な外力を受ける非圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期解の構成・安定性解析・分岐解析をLeray-Hopfの弱解のクラスで行っている。これらの研究では、非圧縮性流体の数学解析で重要となるHelmholtz-Hodge分解を離散問題に対して厳密に行い、Navier-Stokes方程式を直接解く方法を提案している。自由表面問題や二相問題の直接解法にも繋がる汎用性の高い方法である。
弱KAM理論は1階のHamilton-Jacobi方程式に対して展開される。これまでに、その類似物として、粘性Hamilton-Jacobi方程式やdiscounted Hamilton-Jacobi方程式に対する弱KAM理論が整備された。離散Hamilton-Jacobi方程式に対する弱KAM理論は、研究代表者によって、空間1次元の場合にある程度整備されている。本研究を通して、これを一般空間次元の場合に拡張する際に重要となるいくつかのアイデアが得られた。現在、論文にまとめている最中である。また、弱KAM理論と古典KAM理論をつながりを探るために、古典KAM理論の逐次近似に現れるhomological方程式とHamilton-Jacobi方程式のdiscount近似の方法を組み合わせた考察が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で述べた課題を解明するためには、その前提となるアイデア・概念の整理と必要となる数学的道具の準備が必須である。当該年度の研究では、これらの準備的研究が着実に進んでいる。このことから、研究はおおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中である非圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期解の差分法による構成・安定性解析・分岐解析を引き続き進めていく。特に、ある時間周期解が不安定化した後、外力の周期より真に大きい周期を持つ解が現れることを数学的に示したいと考えている。力学系理論の援用なども視野に入れている。実験や数値計算よりそのような周期解の存在は予想されるが、数学的な結果は知られていない。 研究代表者が得た差分法を非圧縮性二相流体の問題に適用し、Leray-Hopfの弱解を直接的に構成する。二相問題に対するLeray-Hopfの弱解の数学解析は発展途上であるため、数学解析・数値解析の両方の観点から進める。二相問題の標準的な数学解析は、自由境界を固定境界に変換することで、非直接的に行われる。そのことによる数学的制限を取り除くことも視野に入れて研究を進める。 流体力学における粒子法に関連して、格子Boltzmann方程式からLeray-Hopfの弱解を構成する数学解析を行う。格子Boltzmann方程式は、Boltzmann方程式のある種の離散化であり、研究代表者が得た差分法による離散Navier-Stokes方程式との関連についても調べていく。 弱KAM理論と古典KAM理論をつながりに関して、古典KAM理論の逐次近似に現れるhomological方程式とHamilton-Jacobi方程式のdiscount近似の方法を組み合わせた解析を進めていく。古典KAM理論では、Diophantine条件によって定義域を制限することで関数の滑らかさを維持する。弱KAM理論では、定義域を制限しないが、関数の滑らかさが失われる。これら二つの状況が発生するメカニズムを古典KAM理論の逐次近似に見出すことで、課題の解明にせまる。
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Causes of Carryover |
研究初年度は、研究課題の解明に向けた準備的研究を集中的に行った。その結果は「成果」として研究集会等で発表する前の段階にあるため、旅費の支出が当初計画より大幅に少なくなった。
翌年度予算と合わせて、主に数値計算用の計算機購入と研究遂行のための出張旅費に充てる。
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