2019 Fiscal Year Research-status Report
非有界な係数をもつ2階楕円型作用素の理論の展開と応用
Project/Area Number |
18K13445
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
側島 基宏 東京理科大学, 理工学部数学科, 講師 (20760367)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非有界な係数をもつ楕円型作用素 / 消散型波動方程式 / 波動方程式 / 高次漸近展開 / Rellichの不等式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2年目)の研究も初年度と同様ユークリッド空間上の消散型波動方程式および波動方程式と、非有界な2階楕円型作用素にまつわる関数不等式(Rellichの不等式)について扱った。波動方程式の研究で主に考察したのは、線形問題の解の挙動および非線形問題の大域解の存在である。函数方程式では、有界領域上のRellichの不等式を扱った。 池田正弘氏(理化学研究所/慶応義塾大学)と若杉勇太氏(広島大学)との共同研究では、摩擦項が時間変数に依存する場合に、摩擦項の減衰度合いが遅い場合に、非線形問題の解の存在時間の詳細な評価を行った。 また、標準的な消散型波動方程式の線形問題の解の詳細な情報として、高次漸近展開についても扱った。これは、消散型波動方程式を抽象的に捉え直すことで「楕円型作用素の構造に依存しない」解の性質を抽出するものである。これは楕円型作用素の構造によって引き起こされる事象を研究する上で重要な考察である。 また、消散型波動方程式の外部領域上での非線形問題の大域解の挙動についても考察している。これは、消散型波動方程式に対する重み付きエネルギー法を応用したものである。以前の研究で導入した超幾何関数を含む重み関数を用いた方法を多少改良して利用することで、大域解を解析するために必要なエネルギー構造を引き出している。 函数方程式に関しては、Giorgio Metafune氏、Chiara Spina氏、Luigi Negro氏(University of Salento)との共同研究である。以前の研究で扱った全空間上の重み付きRellich不等式とは異なり、有界領域の場合は、境界からの影響が無視できないためより詳細な解析が求められる。この問題点を解析半群の理論と積分核評価によるスペクトル構造の解析法を用いることによって克服して、Rellichの不等式の必要十分条件を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消散型波動方程式では、2次元特有の現象を引き出すことには成功していないものの、3次元以上の場合では統一的にエネルギーを評価する方法のメカニズムを解明することができている。この知見を2次元において活用すれば、2次元特有の現象の解析ができると期待している。 非線形波動方程式については、初年度に提唱した爆発現象の解析法を用いた研究を続けており、いくつかの型の非線形波動方程式に対する統一的な視点ができつつある。 他にも、消散型波動方程式に関する特異極限問題に対するアプローチを考案して現在論文を投稿中である。 また、重み付きRellich不等式に関する研究も着実に進められている。このように、これまでの研究法を新たな研究対象に広げることもできており、おおむね順調に推移していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた(消散型)波動方程式に対する解析法を踏まえて、根底にある、楕円型作用素に対する研究を引き続き進める。また、上記の問題に関連した得意極限・非線形問題に関する研究を進める。
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Causes of Carryover |
【当該助成金が生じた状況】残額分を利用する予定が新型コロナウイルスの影響によりすべて延期または中止になったため。 【翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画】出張旅費としての支出が可能になり次第、多数の研究集会に参加することを予定している。また、遠隔による研究打ち合わせを円滑に進めるため、機材の購入を検討している。
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