2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K13447
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 多希子 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (30780150)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形波動方程式 / 特性曲線 / 爆発解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,非線形波動方程式の爆発境界について解析を行なった.具体的には空間1次元の非線形波動方程式に対し,どのような初期条件のもとで,解がどのような性質を持つのか,また爆発境界がどのような性質を持つのかを考察した. ある特定の非線形項を持つ波動方程式に対して,波動方程式が符号変化する爆発解を持つ場合,爆発境界が特異性を持ち,さらに特異性を持つ点では爆発境界の傾きが波動方程式の特性曲線の傾きに収束することが示されていた.これは,爆発境界の特異点付近での解が,ある意味で線形の波動方程式の解の性質を持つこと,また支配的な波動方程式の解が特異点付近で入れ替わることによるものであることが示されている. 一方で,Ohta-Takamura(1998)では,爆発境界が特性曲線の傾きと一致するにもかかわらず,滑らかになる例が示されていた.先行研究では,爆発境界が滑らかになる場合は,爆発境界の傾きの絶対値は,特性曲線の傾きの絶対値よりも小さくなっており,なぜ爆発境界がこのような性質を持つのかは明らかでなかった. 今年度は,Ohta-Takamura(1998)の非線形項を拡張し,ある初期条件のもとで,ある非線形項を持つ波動方程式の爆発境界の傾きが特性曲線の傾きに収束するにもかかわらず滑らかになることを証明した.これは,爆発境界付近での解が,線形な波動方程式の解を持ちながら,特異点付近で支配的な波動方程式の解が入れ替わらないことを示すことで証明することができた.この結果は国際研究集会や国内の招待講演で発表をし,現在論文にまとめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,国内外での発表や研究打ち合わせが制限されてしまった. 一方で,いつ爆発境界の傾きが特性曲線の傾きに収束するのか,いつ爆発解が線形な波動方程式の性質を持つのか,より一般的な状況下で解析をすることができた.また,特性曲線の傾きに収束するのは爆発境界が特異性を持つ場合に限らないことも分かり,特異性を含む,爆発境界の性質の解析が進み,概ね順調に研究が進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,波動方程式のlifespanの解析手法を爆発境界の解析に応用する予定である.爆発境界の解析には,「波動方程式の解をある常微分方程式の解で評価すること」が重要になるが,この部分にlifespanの解析手法を応用する予定である. 具体的には,以下の内容で研究を進める. (1)非線形項が未知関数の空間微分を含む波動方程式の爆発境界を考察する.非線形項が未知関数の空間微分を含む波動方程式の解は時間についての単調性が保証されないため,既存の爆発境界の解析手法を直接適用することはできないが.最初に波動方程式の解が爆発する時間と場所で,先行研究では知られていない特異性を持つことが期待されるため,lifespanの解析を応用することで,新しい爆発境界の性質を調べる予定である. (2)小さい初期値を持つ波動方程式の爆発境界を考察する.今までは,解が保存量を持たない波動方程式の場合,十分大きい初期値でしか爆発境界は考察できなかった.Lifespanの解析手法を応用することで,小さい初期値を含む,より一般的な初期条件に対して特異性を含む,爆発境界の性質を考察する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,発表や研究打ち合わせに制限がかかったため.次年度はオンラインなどで研究打ち合わせを拡充させるつもりである.
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