2020 Fiscal Year Research-status Report
Toward a radical extension of matroidal optimization theory
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18K13451
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
喜多 奈々緒 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (10738082)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 離散数学 / 組合せ最適化 / アルゴリズム / グラフ / ネットワーク / パリティ因子 / 標準分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には,前年度の成果をまとめる中で,パリティ因子に関して当初予定していなかった方向への発展を得た.パリティ因子(T-ジョイン)は,組合せ論の古典的なトピックであり,多項式可解クラスの中核に座すとされる最大マッチング問題の亜種に相当する.最小パリティ因子問題は,マッチングと類似の性質を持つ多項式時間可解である.その一方で,パリティ因子は,マッチングに比してずっと複雑な性質を呈し,また多くの未解決問題と関連するため,多項式可解性の本質を追究する上で特異かつ興味深い対象である.前年度には,マッチングに関する標準分解の一つである,二部グラフのDulmage-Mendelsohn (DM) 分解を,パリティ因子のための定理へと一般化したものを導出した.この成果については,本年度に単著論文として執筆し,オープンアクセスレポジトリにて公開した.しかし,パリティ因子の構造を把握するにはDM分解的な構造把握では不十分であることがその後の考察により明らかになったため,構成的特徴付けを与える標準分解の導出に取り組み,そのようなものとしてパリティ因子の二部的カテドラル分解を得た.カテドラル分解とは本来非二部グラフにおけるマッチングの構造を記述する標準分解である.しかし,二部グラフにおけるパリティ因子の構造を把握するにあたっては,カテドラル分解的な構造の二部的かつパリティ因子アナロジーによって十分な構造を記述する標準分解が与えられることが判った.さらにこの成果により,これまで不明であったDM分解とカテドラル分解の関係について一つの理解が得られた.この成果については単著論文として取りまとめオープンアクセスレポジトリに公開した.また,この成果に関連して得られた,耳分解などに関するさらに2本の論文を執筆中であり,近日中に公開する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画の通りパリティ因子の研究に取り組み非常に有意義な成果を得た.当初はDM分解の直接的なアナロジーとなる構造定理で以って,二部グラフのパリティ因子に関する研究計画の一つの節目となると予想されていた.それ故に,二部グラフに対してカテドラル分解のアナロジーとなる標準分解が存在し重要な役割を果たすことが判ったことは,予想外の展開であったが,パリティ因子の特異な性質が新たにひとつ明らかとなった興味深い成果であった.また,この成果に関連して,臨界準コーム(critical quasicomb)やその耳分解など,重要な概念が新たに判明し,それらに関する成果を得るというさらなる予定外の展開があった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果の論文への取りまとめを続けるとともに,まずパリティ因子の構造をさらに突き詰める.パリティ因子に関する二部的カテドラル分解の成果により,さらに二部グラフのパリティ因子について,疑似的カラークラスの所与に拠らない標準構造の存在が示唆されるため,これに取り組む.また,さらにこの成果を利用することによって,非二部グラフのパリティ因子について新たな標準分解が期待されるため,これに取り組む.これによりパリティ因子の標準分解が二部グラフおよび非二部グラフに対し一そろいすることになる.これらを用いてさらに,パリティ因子における双対性について調べる.双対性は,計算量的によい性質を持つ組合せ最適化問題に共通して現れ,多項式可解性の本質に深くかかわる重要な性質である.したがってパリティ因子における双対性がどのように現れるかを調べることは非常に重要な課題である. また,一方で,双向グラフあるいは符号グラフの研究を再開する.双向グラフとは有向グラフおよび符号グラフの共通の一般化に相当する概念である.これまでの研究において,双向グラフの小道強連結分解理論を導出するべく,臨界グラフの一般化に相当する,ラディアルの概念を提案し,その特徴付けを与えた.今後はこの成果を用い,小道強連結分解理論の導出に向けて取り組む. 上記の二つの方向の取り組みによって得られた成果を横断して考察することにより,共通する構造から,多項式可解な組合せ最適化問題の性質としてマッチングに対する理解のみに得られるものと比してより一般的な性質を見出すことに取り組む.
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Causes of Carryover |
感染症拡大防止策の一環として参加が予定されていた国内外の学会が中止あるいは延期となったこと,および大学への入構が制限されていたことにより,研究計画および支出計画の変更および全体的な後倒しが生じたため.
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