2018 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical modeling for understanding phyllotactic patterns and its geometrical study
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18K13452
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
須志田 隆道 北海道大学, 電子科学研究所, 博士研究員 (00751158)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 葉序 / ボロノイ図 / 連分数展開 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は1948年にF. J. Richardsが提案したフェルマー螺旋上の格子点列を含む一般アルキメデス螺旋格子を母点集合とするボロノイタイリングの数理構造に関する研究に取り組んだ。一般アルキメデス螺旋は、回転角と螺旋の間隔に関するパラメータαの2つをもつ点列である。α=1/2であるとき、フェルマー螺旋格子である。フェルマー螺旋格子と同様に、一般アルキメデス螺旋格子のボロノイタイリングにおいても、隣接するボロノイ領域で定義される斜列係数の分岐過程において、結晶粒界と呼ばれる七角形・六角形・五角形で構成される円環状のパターンが出現する。はじめに、連続パラメータを導入した一般アルキメデス螺旋格子を扱うことで、結晶粒界を作る多角形の集合を位相幾何学的手法を用いて整理した。 次に、J-F. Sadocらによる先行研究を参考にして、一般アルキメデス螺旋格子において、結晶粒界を構成するボロノイ多角形の連続変形を考えた時に出現するドロネー四角形の面積を考えた。結果として、フェルマー螺旋格子の場合にドロネー四角形の面積がπに収束し、α>1/2のときは発散、α<1/2のときは0に収束することを示した。また、ドロネー四角形の形状については、回転角が二次無理数であるとき極限形状が長方形であり、縦横比の極限集合が有限集合であることを示した。また、回転角が黄金比に対等な無理数であるときに極限形状が正方形であることを示した。 最後に、ドロネー四角形を作るパラメータの集合をパラメータαと斜列対ごとに分類し、パラメータの集合を単位円板内で考えた場合、すべてのαに対するパラメータ集合の和集合が単位円板の稠密部分集合であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般アルキメデス螺旋格子のボロノイタイリングに関して、結晶粒界を含む諸性質の数学的な証明をまとめて、日本数学会や日本応用数理学会などの主な学会や研究集会等で報告したが、成果をまとめた論文執筆および投稿には至っていないため、予定していた進度よりも遅れている。 一方で、黄金比収束に関する数学的な証明を与える研究に関しては、Levitovらによる先行研究で示されたポテンシャルエネルギーを用いた最適点配置の数値計算結果を追うことができているため、次年度以降に、数学的な手法を用いて最もエネルギーが低い配置が黄金比に関連するものであることを示す研究に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度得られた一般アルキメデス螺旋格子のボロノイタイリングの諸性質に関する数学的証明をまとめた論文の執筆を行う。今年度の成果として一般アルキメデス螺旋格子のボロノイタイリングにおけるドロネー四角形の面積の収束や発散に関する数学的な成果は得られたが、ボロノイ多角形の面積については成果が得られていないため、ボロノイ多角形の面積に関する数学的な証明を与える研究に取り組む。 ポテンシャルエネルギーを用いた最適点配置問題については、Levitovらによって示された数値計算結果を再現することはできているため、次年度以降に、パイナップルなどを対象にした線形格子においてエネルギーが最も低い点配置が黄金比と関連することを証明する研究に取り組む。さらに、対数螺旋格子や一般アルキメデス螺旋格子などの非線形の問題に関しても最適点配置の問題に取り組む。 葉序の数理モデリングの研究として、実際の植物の葉序に見られる点配置の形成過程を理解するための数理モデルに関して、先行研究の調査および再現を行う。その上で、原基(葉や種などの元になる細胞)の生成箇所や運動に注目した新しい巨視的な微分方程式モデルを考え、幾何学モデルで考えられてきた理想的な点配置(対数螺旋格子や一般アルキメデス螺旋格子など)との関わりを調査する研究に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度の研究では、計算機を用いた数理モデルの数値計算よりも、一般アルキメデス螺旋格子のボロノイ タイリングの数学的な証明の研究に重点を置いたため、計算機を購入するための費用として予定よりも少ない金額を充てることとした。次年度以降の研究では、数理モデルの構築および数値計算を行うので、数値計算の効率化を図るため、残額を計算機の購入費用に充てる予定である。
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