2021 Fiscal Year Research-status Report
双曲型偏微分方程式に対する解の精度保証付き数値計算理論の研究
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18K13453
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 助教 (60707743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精度保証付き数値計算 / 無限次元力学系 / 計算機援用証明 / 複素数値非線形熱方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題において確立したスペクトル法による非線形偏微分方程式に対する解の精度保証付き数値計算方法を利用した計算機援用証明に従事した。無限次元力学系として解釈され、分散型に分類される非線形シュレディンガー方程式を含む複素数値非線形熱方程式の解の大域挙動を解明することに成功した。具体的には、昨年度非線形シュレディンガー方程式のコネクティングオービットの数値検証を成功させた (i)Parameterization method、(ii)厳密な求積方法、(iii)時間大域存在の数理解析手法の3つを組み合わせる数値検証手法を用いて、複素数値非線形熱方程式の非自明な平衡解から延びる複素1次元の不安定多様体に沿って、平衡解周りの様々な方向への複数の零解へのヘテロクリニック軌道を計算機援用証明することで、解の大域挙動を厳密に観測した。そして、複素関数論の定理であるVitaliの定理を利用した非有界な解軌道の存在を証明することにも成功した。これにより、非自明な平衡解からの解の大域挙動は少なくとも一方向に有限時間・無限時間爆発する解が存在することが示せた。さらに、Vitaliの定理が適用できない非線形シュレディンガー方程式に対しても、非有界な解の存在の根拠を精度保証付き数値計算により示し、その存在を数学的予想として残した。本研究は双曲型偏微分方程式に対する解の精度保証付き数値計算の基盤を応用した成果であり、成果をまとめた論文が国際ジャーナル誌に出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、双曲型偏微分方程式に対する解の精度保証付き数値計算の基盤技術を応用し、非線形双曲型偏微分方程式にとどまらない研究成果が得られた点が特筆すべき点である。特に、今回考えている複素数値非線形熱方程式は放物型と呼ばれるクラスの方程式と分散型方程式の橋渡しをする方程式であり、その解の大域挙動を解明した方法論は双曲型方程式を考える際にも大いに役立つことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の成果である無限次元力学系に対する3つの精度保証付き数値計算手法の次なる応用先に挑戦する。一例として、非線形消散波動方程式が考えられ、C0-(半)群の評価に拡散構造がない問題に対して、分散型方程式の解の精度保証付き数値計算に利用した方法を応用し、適切なスケール変換により散逸的なふるまいを捉える予定。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続きコロナ禍における国際学会の中止やオンライン化、および国内学会のオンライン化の影響で、旅費の支出が生じなかったことで次年度に繰越が生じた。次年度は国際学会が欧州を中心に開催する予定があり、旅費・参加費等で支出予定である。
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Research Products
(20 results)