2018 Fiscal Year Research-status Report
流体問題における粘性係数依存性を克服する有限要素スキームとその高速求解法の確立
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18K13461
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
内海 晋弥 学習院大学, 理学部, 助教 (90801176)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 圧力安定化法 / ナヴィエ・ストークス方程式 / オセーン方程式 / 粘性係数依存性 / 有限要素法 / ラグランジュ・ガレルキン法 / 誤差評価 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,流体の運動を記述するナヴィエ・ストークス方程式と関連するオセーン方程式のための有限要素法の開発とその誤差評価を扱っている.特に,粘性係数が小さい問題を考察している.このような場合,高精度な有限要素解を得るためには,境界層を補足し,上流型スキームの考察をするだけでは十分ではない.粘性係数依存性を排する数値解の誤差評価を得るためには,流速と圧力を近似する有限要素空間を適切に選択する必要がある.一方,問題のサイズが巨大になると,計算機に要求されるメモリーの容量も大きくなるので,行列のサイズを小さくする工夫も必要とされる. 本年度は,オセーン方程式のためのラグランジュ・ガレルキン法/圧力安定化法/射影法の結合手法を開発し,粘性係数依存性を排する誤差評価を導いた.区分1次多項式を用いるラグランジュ・ガレルキン/圧力安定化法は国内研究者らにより提案され,報告者により,高精度化され,粘性係数を排する誤差評価が導出されていた.本研究ではこれを射影法と結合させた.流速と圧力を分離して扱うことができ,離散化された連立一次方程式に現れる行列サイズを小さくすることができた.粘性係数が小さいテスト問題に対する数値実験を行い,提案スキームの方が良好であることを確認した.粘性係数が小さい問題に対する実用向きの高精度スキームができたといえる. 一方,研究開始以前より着手していた,流速と圧力を連立させるスキームに関しても,圧力の時間に関する原始関数の粘性係数依存性を排する誤差評価を新たに導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
射影スキームの作成,その粘性係数に依存しない誤差評価,プログラムの作成と数値実験の進捗は想定通りであった. 本研究課題のベースとなっている論文は研究開始以前に投稿していたが,これを本年度に改訂し,専門誌 Journal of Scientific Computing に掲載された.また,関連する研究発表を6件行った. これらのことにより,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
高速連立一次方程式ソルバーを実装する.本年度作成した射影法は流速と圧力に問題を分離できるという特長はあるが,圧力に関する離散化されたポアソン方程式の求解を必要とし,流速に関するそれと比較して,反復解法の収束に時間がかかる.従来の流速と圧力を連立させる混合型有限要素法の数値解の求解においても,それを考慮した前処理手法を考える必要がある.これらを改善する,連立一次方程式ソルバーと前処理の実装,さらに,離散化の方法の見直しを行う.
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Causes of Carryover |
本年度にメモリー容量が大きい計算機の購入を計画していた.しかし,本年度に作成した射影有限要素法により,メモリー使用量を想定よりも小さく抑えることができ,本年度に行った数値計算は,すでにある計算機で実行可能だった. 本年度購入予定だった計算機を次年度に購入し,連立一次方程式ソルバーの研究と合わせ,より規模が大きい数値計算を行う.
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