2019 Fiscal Year Research-status Report
不均一性をもつ双安定な反応拡散方程式における局在解のダイナミクスの解明
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18K13463
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
西 慧 京都産業大学, 理学部, 准教授 (40774253)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 反応拡散方程式 / パターン形成 / 分岐理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
3変数FitzHugh-Nagumo型反応拡散方程式における空間局在解(パルス解やスポット解)のダイナミクス、およびそのメカニズムを分岐理論の観点から明らかにする。これまでの研究では、方程式のアクティベーター (u成分) の反応項に含まれる2つの定数がいずれも正である場合を仮定することが多かったが、本年度は主に、そのうちの片方が正、もう片方が負という条件下での空間1次元のパルスダイナミクスについて調べた。 この場合、2つのパルス解がつながった連結パルス解が現れ、時定数が非常に小さいときは安定な定常解が存在することが先行研究で知られているが、時定数を大きくしたときに見られるダイナミクスなどの詳細については分かっていない。そこで、パルス界面の運動を記述する7次元の常微分方程式の導出を行い、その解析を行った。まず得られた縮約方程式に対して数値計算を行うことで、定常解の他に脈動解や進行解等が現れることがわかり、分岐解析ソフト等を援用することで、その分岐構造が明らかになった。さらに解析結果から、界面間には長距離では引力、短距離では斥力が働くことが分かり、従来の双安定パルス解や振動型テールのパルス列とは異なるメカニズムにより連結パルス解が形成されることも明らかになった。また、3つ以上のパルスがつながった解が存在することも数値計算から明らかになった。これらの成果は、9月に開催された日本数学会2019年度秋季総合分科会において口頭発表した。 また、1つのパルス解の場合でも、他のパラメータの値を変えることで、定常解から一次分岐する解が脈動解から進行解へ変化したり、進行解の分岐枝上にサドルノード分岐点とホップ分岐点が重なる複合分岐点が現れるなど、アクティベーターの2つの定数が正の場合に比べ、分岐構造もより多彩になることが分かった。これらの結果を論文にまとめ、投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに非一様場における双安定パルス解、および2つのパルスが繋がった連結パルス解の振る舞いを記述する縮約方程式 (常微分方程式) が得られており、いずれも元の反応拡散方程式と定性的に良く対応しているため、縮約方程式を用いたパルスダイナミクスのメカニズム解明が加速すると期待される。また、非一様性の種類を変えたり、パルスが3つ以上連結した場合等についても縮約方程式を容易に拡張できるため、さらに新しいダイナミクスの発見も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度には、これまで空間1次元のパルス解に対して得られた縮約方程式のより詳細な解析を進めるとともに、空間2次元におけるスポット解についても低次元力学系への縮約を行ない、空間局在解のダイナミクスの包括的な理解を目指す。
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