2021 Fiscal Year Research-status Report
不均一性をもつ双安定な反応拡散方程式における局在解のダイナミクスの解明
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18K13463
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
西 慧 京都産業大学, 理学部, 准教授 (40774253)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 反応拡散系 / パターン形成 / 分岐理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
3変数FitzHugh-Nagumo型反応拡散方程式における空間局在解(パルス解やスポット解)のダイナミクス、およびそのメカニズムを分岐理論の観点から明らかにする。本年度は空間1次元のパルス解について、以下の研究を行なった。 (i) パルス解の集団ダイナミクス α>0, β<0 というパラメータ条件下では、パルス界面間に引力相互作用が働き、複数個のパルス解がクラスターを形成する。本年度は複数のパルス解が連結し一定速度で進行する進行クラスター解に注目し、その分岐構造や進行速度の分散関係について調べた。その結果、分岐パラメータが十分大きければ、進行クラスター解は連結するパルスの個数によらず安定であるが、パラメータの値を下げていくことでHopf分岐により不安定化し、よりパルスの個数が少ない進行クラスター解へと遷移することが分かった。特に、パタラメータの値に応じて連結するパルスの個数にも上限があることが明らかになった。また、異なる進行クラスター解同士の相互作用方程式を導出し、 2つの進行クラスター解が時間とともに近づき最終的に合体するか、あるいは無限遠へと離れていくかは初期時刻におけるクラスター間の距離で決まることも分かり、その閾値の具体的な関数形を与えた。これらの成果について、3月に開催された日本数学会2022年度年会で講演を行なった。 (ii) 空間非一様媒質中でのパルスダイナミクス ジャンプ型やバンプ型の空間非一様性をもつ系において、脈動パルス解が非一様性のある方向へと移動し、トラップされながらカオス的な界面振動を起こす様子が広範なパラメータ領域で観測される。そのメカニズムを解析的に調べるため、中心多様体縮約により脈動パルス解の動きを記述する3次元常微分方程式 (Hopf分岐の標準形とパルスの並進運動が結合した系) を導出し、数値計算でみられる振る舞いが再現されることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、縮約方程式がパルス解の集団運動の記述にも有効であることが分かり、PDEの数値計算では難しかった集団ダイナミクスの数値的探索や分岐メカニズムの解明が進展することが期待される。また、空間非一様性との相互作用ダイナミクスについても、ジャンプ型やバンプ型の非一様性で広くみられる振る舞いの普遍的なメカニズムを、低次元の常微分方程式を用いて明らかにできる可能性も示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
パルス解の集団運動については、他の種類の集団ダイナミクスについても解析を行い、空間2次元のスポット解においても対応する解があるかどうか調べる。また、このような集団運動が現れるための条件を整理し、Swift-Hohenberg方程式のように振動型テールをもつ系のクラスター解との類似点や相違点を明らかにする。また、非一様場でのダイナミクスについても、空間2次元のスポット解で同様の脈動解の有無を確かめる。これまで得られた結果については、可及的速やかに論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスにより、研究集会等が中止、もしくはオンラインでの開催となり、出張旅費の支出を行わなかったため。また、新たな物品の購入も行わなかったため。次年度は出張旅費や書籍購入等に使用する予定である。
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