2021 Fiscal Year Research-status Report
非平衡定常状態の典型的な状態を用いた解析手法の構築
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18K13466
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白井 達彦 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (20816730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子開放系 / 非平衡定常状態 / 量子相転移現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において,2021年度は以下の2点の研究をおこなった.第一に量子開放系についての研究,第二にランダム系についての研究である.
量子開放系についての研究では,孤立量子多体系において平衡状態の特徴付けや熱平衡化を説明する上で重要な役割を果たす典型的な状態を,散逸環境と接した系である量子開放系に拡張する研究を進めた.厳密対角法やテンソルネットワーク法を用いて数値的な解析を行なった結果得られた,一様に非平衡散逸環境と接しているバルク散逸系の定常状態および緩和過程を有効温度によって記述できるという結果をPhysical Review Eにて報告した.また,マクロな緩和現象と量子開放系の時間発展演算子であるリウビル演算子との間の関係について調査した.
ランダム系についての研究では,相互作用係数にランダムネスの入った一次元イジング模型の量子相転移現象に非一様な横磁場が与える影響を調べた.量子コンピューティング技術に深く関連し,また数学的に取り扱いが簡単であるという理由からこの模型を採用した.相互作用係数のランダムネスと横磁場の強さとの間に相関を与えることによって,量子相転移現象のユニバーサリティクラスが変わるということを厳密に明らかにした.具体的には,スピン模型を自由フェルミオン模型に変換し,相転移点直上におけるエネルギーギャップのシステムサイズ依存性を評価することで,動的臨界指数の上限と下限を評価した.この結果をAnnals of Physicsにて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にて,第二の研究として述べた研究は,量子コンピューティングに応用できる結果であり,今後量子デバイスの実装技術として発展が期待される手法であると考えられる.また,第一の研究として述べた研究は,これまでに得た成果を論文で報告し,広く対外発信をすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究成果を受け,今後は研究実績の概要で述べた第一の研究と第二の研究それぞれの研究を進めてゆく予定である.第一の研究では,手法の適用可能なスピン模型の範囲を広げるための研究を実施する予定である.第二の研究では,マクロな緩和現象と量子開放系の時間発展演算子であるリウビル演算子との間の関係について引き続き研究を進めてゆく.
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Causes of Carryover |
参加を予定していた国際会議や国内会議の現地開催が中止となり,オンライン形式での開催となったため,旅費において次年度使用額が生じた.今年度は,PCの購入を予定している.
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