2019 Fiscal Year Research-status Report
Dynamical property of topological physics in multi-dimensional space of superconducting phase at multi-terminal Josephson junction
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18K13484
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横山 知大 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40708525)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジョセフソン接合 / 多次元空間 / 超伝導回路 / マイクロ波応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究では、主に数値計算によって多端子ジョセフソン接合におけるゼロエネルギー状態の発現に起因した準粒子波動関数の実空間分布を調べた。本年度もその計算を進めつつ、ジョセフソン接合を含む超伝導回路における励起状態制御に関する研究を進めた。 数値計算は空間を離散化するtight-binding模型を用いて、十字型の2次元空間をでの4端子ジョセフソン接合の準粒子状態を議論している。現在の進捗では、ワイル特異点が発現する機構の解明、具体的なパラメータ条件の議論を進めているが、当初予想されたゼロエネルギー状態による局在状態は明示的には確認できていない。 一方、研究代表者が所属する研究室では光物性を主な研究テーマとしており、多端子系も含めたジョセフソン接合における光励起による量子状態、およびマイクロ波応答制御を目的とした超伝導回路におけるマイクロ波伝導の研究に着手した。擬1次元の伝送路にジョセフソン接合に基づいた超伝導量子ビットが複数個、空間的に離れて結合した系を考える。この系における光子応答をinput-output理論に基づいて定式化し、1つの量子ビットの励起状態から放出されるマイクロ波光子について他量子ビットのパラメータや空間配列による伝送特性を明らかにした。ジョセフソン接合を用いた量子ビットの準位間隔は外部パラメータによって動的に制御される。特に伝送路の左右方向への放出と励起の長時間捕捉に着目し、制御ビットのエネルギー間隔を光子エネルギーと同程度にすると左方向へ、大きく変調すると右方向へ放出される、などの制御性を明らかにした。この研究を擬1次元から2次元ネットワークに拡張することで、超伝導メタマテリアルなどへの発展も期待される。 当初の研究計画に新しい発展性を加えた状況だが、ネットワーク化において結合部は多端子接合となるため、本計画での成果が土台になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究室での研究内容との両立に苦慮している。研究を単年を3回と考えるのではなく、3年間を1つとするエフォートマネージメントと捉え、2年度目は所属研究室での研究内容を取り込んだ発展性を重視した。結果として、当初の研究計画の進捗に遅れは見られるものの、全体としての研究状況は多様性のある発展があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目では、所属研究室での光物性研究と癒合させた内容に多くのエフォートを割いたので、当初の研究計画にはない発展性が得られた。3年度目では、当初の研究計画に多くのエフォートを割ける状況できるので、集中的な研究進捗が期待される。特に、当初の研究計画では3年度目に海外での共同研究のための議論や国際会議での発表を予定していたが、昨今の国内外の情勢によって国際会議を含めた渡航が著しく制限されると考えている。逆に、それだけ研究進捗に時間を集中できると言える。本来であれば渡航費に使用する予算を追加の計算機購入に使用し、より加速的に研究を進捗させる。 具体的な研究方針として、まず申請計画の(i)に取り組む。多端子系の定式化は散乱行列に基づいたものだが、散乱行列のユニタリ性を複素共役したものと合わせることでエルミート性に変換することができる。その際、固有状態は同じものなので、散乱行列から有効ハミルトニアンへの書き換えが可能である。この有効ハミルトニアンのスペクトルからさらに特異点近傍の有効模型を取り出すが、散乱行列に時間振動する摂動を付加することで、ゲート電極による有効模型の時間振動を導入できる。一方、位相差空間で考えるベリー曲率場は位相差を座標とした「幾何学的な磁場」という理解ができる。従って、この「磁場」を振動させることで位相差空間での「ベリー曲率電磁場」を議論する。 同時に、数値計算も進める。空間反転対称性がある場合に縮退したゼロ点が得られることは明らかにしているので、その状況からワイル特異点が得られる条件を探ることから始める。具体的には磁場の導入や不純物、スピン軌道相互作用を考慮し、時間反転・空間反転・スピン回転対象性の破れの影響を議論する。これは研究代表者の手法が最も適した計画である。 また、端子毎の超伝導ギャップの大きさが異なる場合を議論し、実験状況に即した議論を進める。
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Causes of Carryover |
2019年度での研究エフォートを所属研究室での研究内容との配分で調節したために予定していた旅費などが発生しなかった。また、昨今の国際情勢もあり、海外に滞在しての議論などが不可能になってしまった。 国際会議への参加などで、所属機関の業務と被ってしまう日程もあったことも影響している。 3年度目でより研究を進捗させるために、2年度目に無理に小分けに使用するよりも基金化のメリットをうまく使用した方が良いという判断をした。
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