2018 Fiscal Year Research-status Report
Phonon angular momentum and anomalous phonon response
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18K13494
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新居 陽一 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80708488)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | フォノン角運動量 / 空間反転対称性の破れ / 超音波 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、時間反転対称性や空間反転対称性が破れた物質中でフォノン角運動量に由来する特異な物性の観測である。本年度は希土類パイロクロア酸化物Tb2Ti2O7を対象として系統的な弾性波実験を行った。本物質は、量子スピン液体の候補物質として着目されていことに加えTbイオンの基底状態に軌道自由度があり弾性波の観点からも重要である。実際、弾性定数の温度依存性を系統的に測定したところ、電子軌道の揺らぎによって巨大な弾性ソフト化が観測された。また磁場を加えるとソフト化が大きく抑えられることが分かった。これらはゼロ磁場で縮退した基底二重項がゼーマン効果によって分裂して行く振る舞いを捉えたものである。また磁場方向を回転させながらソフト化の振る舞いを調べ、これをTb電子状態の計算と合わせ比較した。その結果、特に低磁場において計算と定性的に異なることが分かった。計算ではTb間の相互作用は考慮していないため、実際にはTb電子間に相関があり、特に低磁場において無視できない寄与を与えていることを示している。 またゼーマン分裂した二重項と等しいエネルギーの弾性波を注入した場合、弾性波の偏向方向(角運動量)に依存して巨大な吸収が期待されるが、本研究では数10MHzから200MHz程度までの周波数において弾性波応答の実験を行ったところ、この共鳴に由来するような巨大な効果は観測されなかった。 一方で、本年度は磁性体上の表面弾性波デバイスの作成にも注力した。Tb2Ti2O7表面にZnO圧電薄膜を成膜し櫛形電極を作成することで、GHz領域の弾性波が比較的容易に生成でき、上述の共鳴効果がより明瞭にみられると期待される。ZnO圧電薄膜として機能するには、絶縁性やc軸配向性が重要となるが、本研究ではこの条件だしを行った。絶縁性およびc軸配向したZnO薄膜を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Tb2Ti2O7の弾性波物性を系統的に測定することは成功したが、フォノン角運動量に由来する異常な振る舞いを観測するには至っていない。高周波フォノン測定系の構築も進んでいるため、これを利用することで、Tb酸化物をはじめ空間反転対称性の破れた磁性体における異常なフォノン物性を開拓する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、注力してきた高周波フォノン測定を確立することで、磁性体やキラル物質、極性物質、それぞれにおいて特異なフォノン応答を明らかにする。特に表面弾性波デバイスや共振器を用いたGHzフォノン励起を利用することで、フォノンに対する電流、電場、磁場などの外場効果を明らかにする予定である。
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