2019 Fiscal Year Annual Research Report
Photo-Induced Superconductivity Studied by Soft X-Ray Laser Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy and Terahertz Spectroscopy
Project/Area Number |
18K13498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 剛 東京大学, 物性研究所, 助教 (30815915)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 光物性 / 非平衡状態 / 超高速現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光誘起に伴う物質中における新奇な相の探索を、高温超伝導をはじめとする量子物質を対象に、高次高調波時間分解光電子分光法とテラヘルツ時間領域分光法を用いて行ってきた。 鉄系超伝導体FeSeにおいては、ガンマ点に存在する正孔バンドとM点に存在する電子バンドでのキャリアダイナミクスを詳細に観測することに成功した。その結果、光励起により、電子が正孔バンドから電子バンドに移行され、それに伴い、顕著な格子変調が起こることを明らかにした。さらに詳細な解析から、超伝導ギャップのような信号を取得することに成功し、光励起状態が非常に長く、1ns程度持続することも明らかにした。 一方、その他の量子物質として、励起子絶縁体の候補物質であるTa2NiSe5において、光励起により新奇な金属相を観測することに成功した。観測された金属相は、温度変化では起こりえない、光誘起特有の相であることが明らかになった。さらに詳細な測定と解析の結果、金属化に大きく関与する格子振動を特定することに成功した。一方、励起子絶縁体としての性質に着目すると、時間応答の測定から、Ta2NiSe5が励起子絶縁体特有の振舞を示すことを解明し、この物質が励起子絶縁体としてより有力な証拠を提示することに成功した。 さらに、準結晶2層グラフェンにおける、層に依存したキャリアダイナミクスを詳細に観測することに成功し、超高速な時間領域でキャリア数が2層間で不均衡になる振舞を発見し、超高速デバイスの可能性について提示することに成功した。 得られた一連の研究結果により、令和元年度において、主著2本を含む計3本の学術誌への掲載、国際会議における1件の招待講演と1件のポスター賞受賞、さらに国内学会における6件の発表をすることに成功した。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] 時間分解X線回折によるBaFe2As2における 超高速格子変調ダイナミクスの観測2020
Author(s)
鈴木 剛, 久保田 雄也, 下志万 貴博, 中村 飛鳥, 田久保 耕, 伊藤 俊, 山本 航平, 道前 翔矢, 佐藤 光, 平松 秀典, 細野 秀雄, 富樫 格, 矢橋 牧名, 和達 大樹, 松田 巌, 辛 埴, 岡﨑 浩三
Organizer
第33回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム
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[Presentation] Ultrafast Carrier Dynamics in a Twisted Bilayer Graphene Quasicrystal2019
Author(s)
T. Suzuki, T. Iimori, S. J. Ahn, Z. Yuhao, M. Watanabe, J. Xu, M. Fujisawa, T. Kanai, N. Ishii, J. Itatani, K. Suwa, H. Fukidome, S. Tanaka, J. R. Ahn, K. Okazaki, S. Shin, F. Komori, and I. Matsuda
Organizer
The 11-th International Symposium on Ultrafast Surface Dynamics
Int'l Joint Research
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[Presentation] Time-resolved ARPES study on Ta2NiSe52019
Author(s)
T. Suzuki, Y. Shinohara, Y. Lu, M. Watanabe, J. Xu, H. Takagi, M. Nohara, N. Katayama, H. Sawa, M. Fujisawa, T. Kanai, N. Ishii, J. Itatani, T. Mizokawa, K. L. Ishikawa, K. Okazaki, and S. Shin
Organizer
Spectroscopies in Novel Superconductors 2019
Int'l Joint Research
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[Presentation] 時間分解光電子分光法による準結晶ねじれ二層グラフェン における超高速キャリアダイナミクスの研究2019
Author(s)
鈴木 剛, 飯森 拓嗣, Sung Joon Ahn, 趙 宇豪, 渡邉 真莉,徐 佳笛, 藤澤 正美, 金井 輝人, 石井 順久, 板谷 治郎, 諏訪 健斗, 吹留 博一, 田中 悟, Joung Real Ahn, 岡﨑 浩三, 辛 埴, 小森 文夫, 松田 巌
Organizer
2019年日本物理学会秋季大会
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[Presentation] 周波数領域角度分解光電子分光法による Ta2NiSe5における光誘起絶縁体金属転移の研究(実験)2019
Author(s)
鈴木 剛, 篠原 康, 魯 楊帆, 渡邉 真莉,徐 佳笛, 高木 英典, 野原 実, 片山 尚幸, 澤 博, 藤澤 正美, 金井 輝人, 石井 順久, 板谷 治郎, 溝川 貴司, 石川 顕一, 岡﨑 浩三, 辛 埴
Organizer
2019年日本物理学会秋季大会
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[Presentation] 励起子絶縁体 Ta2Ni1-xCoxSe5の時間分解光電子分光2019
Author(s)
密岡 拓心, 鈴木 剛, 渡邉 真莉, 藤澤 正美, 金井 輝人, 石井 順久, 板谷 治郎, 岡崎 浩三 , 辛 埴, 野原 実, 片山 尚幸,澤 博,魯 楊帆,高木 英典, 溝川 貴司
Organizer
2019年日本物理学会秋季大会
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[Presentation] 時間分解角度分解光電子分光による Si(111)基板上Cu2Si層の電子状態の解明2019
Author(s)
坂本 実可子, 鈴木 剛, 辻川 夕貴, 濱田 雅史, 佐藤 祐輔, 徐 佳笛, 任 千慧, 岡﨑 浩三, 辛 埴, 松田 巌, 高山 あかり
Organizer
2019年日本表面真空学会学術講演会