2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of microscopic dynamics of quantum vortex in superfluid helium
Project/Area Number |
18K13503
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
永合 祐輔 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (50623435)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 低温物性 / 超流動 / 量子渦 / 量子乱流 / トポロジー / マイクロ・ナノデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに作製した、架橋カーボンナノチューブ(CNT)上にNbN超伝導電極薄膜を蒸着した架橋超伝導ナノワイヤー(scNW) 機械共振器について、配線接続部の改良を行い、新たに同軸線コネクタを用いた試料台を作製し、高分解能で広範な周波数帯域の発振器を用いて再度静磁場中での駆動実験を試みたが、共振信号は検出されなかった。原因としてCNTが直線形でないことや架橋クランプの強度が弱いため正常に強制振動しない可能性が考えられる。 そこで、新たに以下の2種類のNEMS共振装置の開発に着手した。一つ目は、先行研究実績を踏襲し、窒化ケイ素(SiN)を用いた梁型の架橋ナノビーム共振器(SiN-NB)を作製する。当年度では、電子線描画用マークとAl電極を蒸着した基板の準備まで行った。二つ目は、光造形法により樹脂製ナノビーム共振器(Resin-NB)を開発する。様々なサイズの構造物の作製を試み、最小太さ300nm、最長30umの架橋Resin-NBの実現に成功した。さらに、構造物の基板への移動と固定やAu/Cr電極と配線の作製などの方法を確立した。これらの試料の測定用ガラスデュワー冷凍機を新たに準備し、試料台、超伝導マグネットを自作した。 量子乱流中における渦のダイナミクスや放出される素励起を調べるために、超流動ヘリウム中でNEMS共振装置に乱流・渦を供給する装置が必要である。そこで、光造形法を用いて一様定常乱流を実現するための振動グリッド、ならびに生成量子渦制御に向けた孔直径4~100umの細孔板振動子の開発を行った。振動グリッドは低温4Kで駆動テストを行い、正常に共振することを確認した。細孔板振動子は現在開発、実験準備が進行中である。また、素励起(フォノン)検出用のNb超伝導接合デバイスも作製し、低温4Kで超伝導ギャップ電圧へのスイッチング動作を確認した
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度初めの計画通り、測定機器や配線関係の改良を行い、scNW共振器の再実験まで進めることができた。結果、共振信号は得られなかったが、新たな方針として、SiNナノビーム共振器や光硬化樹脂製ナノビーム共振器の作製に方向転換し、現在順調に進展している。また、新たに渦・乱流生成供給装置の開発、動作テストを進めることができた。測定のための新しい冷凍機と超伝導マグネットの準備も完了したため、次年度には新装置の超流動ヘリウム中での渦・乱流生成実験が行える状況まで進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
SiN-NB共振器については引き続き微細加工を進め、準備した基板にエッチングによってトレンチ構造およびナノビームを作製する。Resin-NB共振器については、~100um四方程度の電極パッドに配線ボンディングを行うため、昨年度購入した銀ペーストとエポキシボンダーを用いて配線を行い、導通チェックを行う。これらの共振器試料を東大低温センターで準備したガラスデュワー冷凍機で共振動作テストを行い、正常動作の確認ができ次第その後超流動ヘリウム中での共振実験を行う。エッチングや光造形法によって作製した梁型試料であれば、たわみはあるがほぼ直線形であり、クランプの問題も解決される。特に先行研究実績のあるSiN-NB共振器を基準に、各NEMS共振器の性能および量子渦生成について考察し、それをもとに昨年度作製したscNWの実用可能性についても再検討する。 渦・乱流生成用の細孔板振動子をガラスデュワー冷凍機で動作テストを行い、超流動ヘリウム中での共振実験を行う。実験結果を解析し、渦生成臨界速度の理論との比較・議論を行う。その後、NB共振器と渦・乱流生成装置を組み合わせたアセンブリ装置の準備、量子乱流生成検出実験に取り掛かる。結果に応じて定常流による渦生成装置としてヘルムホルツ共鳴装置の開発も検討する。 素励起検出ついては、主として上記アセンブリ装置を用いてNB共振器による検出実験を計画・準備する。それと並行して、超伝導接合デバイスの可能性を検証する。まず接合2個を各々フォノンの生成・検出装置として用い、簡易冷凍機でフォノンの生成検出テスト実験を行う。その後、渦生成装置と組み合わせて、乱流や渦から放出するフォノンの検出実験の計画を検討する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で国内学会が現地開催中止となり、予定していた出張費を使用しなかった。当初は超低雑音増幅器一式の購入予定があったが、昨年度に高周波ロックインアンプを購入したため、既存の増幅器とロックインアンプ内蔵の電源を使用した方が効率的であると判断し、そのための出力ケーブルのみを購入した。本学で共用装置として3Dプリンターが導入されたことから、これを用いた光硬化樹脂製デバイス開発計画を新たに開始したため、微細加工や必要な消耗品代などの費用に一部使用した。以上の予定変更から当初の計画と差が生じ、新たに次年度使用額が生じた。 次年度は、新型コロナウイルスの影響で国際会議延期が濃厚であり、さらに国内学会も現地開催中止の可能性があるため、代わりに引き続き進行中のナノデバイス試料作製のための微細加工プラットフォーム使用料と物品費、出張費に主として使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)