2018 Fiscal Year Research-status Report
Simulation study of mesoscale cooperative phenomena in ionic liquids - slow relaxation and interface fluctuation
Project/Area Number |
18K13513
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芝 隼人 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (20549563)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | イオン液体 / メソフェーズ / ガラス転移 / 界面ゆらぎ / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン液体は、イオンのみからなるにもかかわらず常温では液体状態を取る塩の総称である。単一成分液体にもかかわらず、カチオン分子内に極性、非極性部位が混在することによって興味深い内部時空階層性を獲得することが見出され、基礎的学理と機能性発現探求の両面において、興味深い研究対象と言える。本研究課題では、イオン液体の分子動力学(MD)シミュレーションによりイオン液体の示す空間構造と輸送、ゆらぎの解明を目指している。特にサブミクロン、サブマイクロ秒スケール遅い緩和・界面ゆらぎを分子レベルと直接繋ぐことを目標とする。 2018年度はイミダゾリウム系イオン液体を取り上げて、アルキル側鎖の鎖長に依存したダイナミクス発現の変化を調べるため、10^{10} MDステップに及ぶ計算を行った。これは、実験ではマイクロ秒の長時間に対応する。カチオンの分子内自由度に基づき緩和関数を定式化し、それぞれの緩和時間を計算した。アルキル鎖長が長い時に、並進自由度と回転自由度の緩和時間がデカップルし、後者が長い緩和時間を与えており、なおかつストレス相関から見積もった粘度と相関していることが見出された。 また、それと並んで、強い振動が見られるモデルガラス系の動力学を特徴付ける手法を発展させており、2018年度の研究の結果、局所力学緩和を特徴付けるには距離と粒子配置トポロジの双方を考慮した物理量の使用が必要であることが判明している。このモデルガラスに対する知見を、イオン液体の全原子シミュレーションの解析に用いるために導入している秩序・構造変数を通じた解析と有機的に連携させ、次年度も研究を継続する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全原子モデルに基づくMD シミュレーションは、パッケージプログラムとオリジナルルーチンを組み合わせつつ現在計算が進行しているところである。トラジェクトリから時間相関関数を解析するためのプログラム整備が順調に進行しており、第一の目標である内部自由度の緩和と輸送係数を結びつける解析が可能となっており、ほぼ計画通りのペースで進展しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
イオン液体を急冷すると粘度は急上昇するフラジャイルな振る舞いを示す。この状況における並進・回転自由度の緩和時間と輸送係数との関係を探るための高精度な数値的解析を行い、ガラス分野でよく知られた動的に不均一な協調運動の時空間解析を実行し、フラジリティの発現機構を解明する。また、界面ゆらぎについては、大規模シミュレーションを可能にするために、並列分子動力学シミュレーションソフトウェアの拡張開発を実行する。
|
Causes of Carryover |
2018年度の計算機サーバー調達にあたっては、3社相見積りによって効率的な調達を行った結果、設備備品費の使用額が計画時点における形状金額を下回ったことにより未使用額が発生した。2018年度交付申請時には開催が判明していなかった、2019年度に開催の国際研究集会での参加・発表に要する旅費その他の経費として使用する予定である。
|