2021 Fiscal Year Annual Research Report
Neural progenitor cells and three-dimensional flow
Project/Area Number |
18K13515
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川口 喬吾 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (00787319)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 細胞集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクティブマター分野においては、2次元系の理論・数値シミュレーション・実験系が多く研究されているが、生体内での細胞集団や細胞骨格系のダイナミクスの多くは3次元系である。本研究では、アクティブマター物理の生体内現象の理解や制御を視野に入れるため、3次元系における細胞集団運動の研究を実験・理論両面から進めていく。特に本研究では、液晶や細胞骨格系などのやや人工的な例に頼らず、細胞集団運動の3次元動態をin vitroで観察し解析することを狙っており、2次元培養条件下ではネマチック相や半渦に対応するトポロジカル欠陥といった液晶と同様なパターンを生じる、神経幹細胞を実験系として用いている。
最終年度は引き続き、神経幹細胞の運動パターンと細胞間相互作用、キラリティの起源について調べた。前年度に得られた結果により、細胞骨格系の阻害剤は低密度培養条件における一細胞レベルの挙動にほとんど影響を及ぼさないことがわかっていたが、同様の細胞密度条件では阻害剤を高濃度に添加した場合には細胞が運動や増殖を停止してしまうため、集団レベルで見られる阻害剤によるキラリティ反転の影響が細胞低密度条件でも起きるかが完全に明らかではなかった。そこで、細胞密度と阻害剤許容量の関係をより詳細に調べ、ある程度低密度条件下でも阻害剤濃度を上げ、細胞運動が停止しない条件を見つけることに成功した。
これらの実験基盤により、広い細胞密度・阻害剤濃度の条件下における細胞トラックデータが大量に得られるようになったため、それらのデータから細胞間相互作用の関数系を推定するアプローチを新たに開発した。これにより、一細胞レベル、二体相互作用レベルのキラリティやその変化が定量できるようになっただけでなく、細胞間相互作用の異方性が明らかになり、特に神経幹細胞は前後方向と左右方向にいる細胞に対する応答が異なっていることがわかった。
|