2019 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化症を誘発するマクロファージ内脂質蓄積化メカニズムの新シナリオ
Project/Area Number |
18K13521
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
下林 俊典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター), 研究員 (50787124)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脂肪滴 / 相転移 / ソフトマター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内でみられる脂肪滴というオルガネラの内部で起こる液体液晶相転移現象に着目し、1)相転移ダイナミクスとその後の構造の物理的解明、更には2)相転移現象とマクロファージ泡沫化現象との因果関係の解明を目指す。本年度は1)相転移ダイナミクスとその後の構造の物理的解明に関して次にあげる結果を見出した。細胞内脂肪滴でステロールエステル濃度に依存して液体-液晶相転移がみらえることを見出していたが、その定量理解は得られていなかった。そこで培地に添加するコレステロールの濃度を 25, 50, 170 uM と変化させ、液晶脂肪滴をもつ細胞の割合 p (%) を温度 T の関数として定量した。結果、温度上昇に伴いp (%) は総じて減少した。以上の定量データを用いて、0<p<50 の場合は「脂肪滴は液体相 」、 50<p<100「脂肪滴は液晶相」と大別した。横軸に脂質質量比を、縦軸に温度をとり、細胞内脂肪滴の液体 - 液晶相転移の相図を作成した。なお、各条件における脂質質量比は脂肪滴を遠心分離により単離し、TLCアッセイによって求めた。更に、この相転移現象の普遍性を調べるために、 U2OS 細胞と MEF 細胞を用いて同様の実験を行い、データ点を相図に重ね合わせたところ、細胞種に依らない液体 - 液晶相転移の普遍的な相境界が得られた。以上より、普遍的に SE が脂肪滴の液体 - 液晶相転移を駆動することを定量的に証明した。これまでに得られた結果を論文としてまとめ、国際論文誌PNASに掲載した。
|