2022 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化症を誘発するマクロファージ内脂質蓄積化メカニズムの新シナリオ
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18K13521
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下林 俊典 京都大学, iPS細胞研究所, 准教授 (50787124)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2023-03-31
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Keywords | 相分離 / 相転移 / 脂肪滴 / 液晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内でみられる脂肪滴というオルガネラの内部で起こる液体液晶相転移現象に着目し、1)相転移ダイナミクスとその後の構造の物理的解明、更には2)相転移現象とマクロファージ泡沫化現象との因果関係の解明を目指す。これまでの研究にといて1)相転移ダイナミクスとその後の構造の物理的解明に関して次にあげる結果を見出した。細胞内脂肪滴でステロールエステル濃度に依存して液体-液晶相転移がみらえることを見出していたが、その定量理解は得られていなかった。そこで培地に添加するコレステロールの濃度を 25, 50, 170 uM と変化させ、液晶脂肪滴をもつ細胞の割合 p (%) を温度 T の関数として定量した。結果、温度上昇に伴いp (%) は総じて減少した。以上の定量データを用いて、0<p<50 の場合は「脂肪滴は液体相 」、 50<p<100「脂肪滴は液晶相」と大別した。横軸に脂質質量比を、縦軸に温度をとり、細胞内脂肪滴の液体 - 液晶相転移の相図を作成した。なお、各条件における脂質質量比は脂肪滴を遠心分離により単離し、TLCアッセイによって求めた。更に、この相転移現象の普遍性を調べるために、 U2OS 細胞と MEF 細胞を用いて同様の実験を行い、データ点を相図に重ね合わせたところ、細胞種に依らない液体 - 液晶相転移の普遍的な相境界が得られた。以上より、普遍的に SE が脂肪滴の液体 - 液晶相転移を駆動することを定量的に証明した。これまでに得られた結果を論文としてまとめ、国際論文誌PNASに掲載した。また2020年には、本研究に関する総説を日本生物物理学会の学会誌にて出版した。最終年度では、核内における脂肪滴の形成過程について予想外の興味深い結果を発見し、今後の展開を期待できる。
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