2020 Fiscal Year Research-status Report
磁気圏型プラズマにおける自己組織化の物理機構の解明:熱・粒子輸送に着目して
Project/Area Number |
18K13525
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
釼持 尚輝 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80781319)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁気圏型プラズマ / 自己組織化 / 熱・粒子輸送 / 核融合 / トムソン散乱計測 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、天体磁気圏が高ベータプラズマを自発的に閉じ込めるメカニズムを解明するため、RT-1装置を用い自発的に形成される高ベータプラズマの熱・ 粒子特性を明らかにすることである。局所電子温度・密度分布を非接触・不干渉かつ幅広い温度密度領域で計測できるレーザートムソン散乱計測やイメージング 計測のトモグラフィー法は、本研究目的である、高ベータプラズマの局所計測を基にした輸送の議論に最適である。令和2年度は内向き拡散のメカニズムを解明するために開発された詳細な計測および解析手法を用いて2つの新しい知見を得た。 (i)深層学習を用いたトモグラフィ法をライン比分光イメージング計測に適用し、内向き拡散により自発的に形成されるピークした密度分布を詳細に可視化した。内向き拡散によりコイル付近の高磁場領域にピークした密度分布が形成されていることが明らかになった。 加えて、これまで三視線の干渉計から推測されていた密度分布よりもよりピークした分布がフラックスチューブに沿って存在していることが示唆された。 (ii)放電中に中性ガスを入射することで、ピークした密度分布が再構成される際に低周波揺動が励起されることを発見し、揺動の時空間構造の詳細計測から以下の3点が明らかにした。(1)内向き拡散中には1kHzの電子反磁性方向に伝搬する揺動が発生し、内向き拡散が終了しピークした密度が形成された後は1kHzの揺動は消え、イオン反磁性方向に伝搬する0.7kHzの揺動が支配的になる。(2)電子密度の上昇に伴い、低周波揺動の強度とトロイダル方向の位相速度が上昇するが、プラズマ圧力への依存性は低いことから、低周波揺動を駆動する自由エネルギーは密度分布の再構築であることが示唆された。(3)揺動の伝搬方向が密度分布形状に依存することから、ドリフト波不安定性との関連が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の当初目標は、(1)これまでに明らかになってきた自己組織化プラズマの温度・密度分布、及び自己組織化を駆動する低周波揺動の時空間構造をもとに、密度の自己調整機構のメカニズム解明に取り組むこと、(2)本研究課題の結果の総括として、令和2年に開催される第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議において研究成果を報告し、国際論文誌Nuclear Fusionに投稿することであった。 (1)に関しては当初の計画を概ね達成できた。本研究で密度分布の自己調整機構を明らかにすることで、定常閉じ込め系に共通する長寿命構造の基礎物理における知見を与えることができた。また、本研究で開発した深層学習を用いたトモグラフィーの成果が評価され、プラズマ・核融合学会第25回技術進歩賞を受賞した。 (2)に関してはコロナ禍の影響のために第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議が延期になり、総括となる研究報告ができなかった。 上記2点の研究成果により、本研究課題はやや遅れていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の結果の総括として、令和3年に開催される第28回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議などにおいて研究成果を報告する。本研究課題の成果をまとめ、国際論文誌Nuclear Fusionに論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
研究成果を報告するための学会・研究会参加のための費用として確保していたが、コロナ禍の影響により各種集会が中止・延期されたため次年度使用額が生じた。コロナ禍の状況が改善次第、学会報告および論文投稿費として使用する予定である。
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