2018 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ質量を説明する最小超対称標準模型の構築
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18K13534
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川村 淳一郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 訪問研究員 (00814667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超対称標準模型 / 暗黒物質 / 電弱対称性の破れ / 素粒子理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ミラージュ伝達から予言されるゲージーノの質量比によって、超対称標準模型が現実的な真空構造を自然に説明できる事を明らかにした。この結果は論文にまとめ、研究発表を行った。更に、高エネルギーでパリティを保存する模型、第4世代に相当するベクトル型フェルミオンを導入した模型についての結果も発表した。 最小超対称標準模型には、ヒッグシーノの質量項が自然に説明できないという問題がある。ヒッグシーノはレプトン数を破った際にニュートリノとの混合を起こすため、ニュートリノ質量と強く関連づいている。当初の計画では、この質量項は何らかの機構で説明できたと仮定し、ニュートリノ質量に着目する予定であった。しかし、想定していたゲージーノ質量比がこのヒッグシーノ質量生成機構を与えうる、という興味深い事実を発見したため、その解析を行った。 一重項ヒッグス粒子の真空期待値によるヒッグシーノ質量項生成機構が知られていた。この場合、新たなヒッグス粒子も含めたポテンシャルが観測と整合する真空構造を持つ必要があるが、その起源を与える事は困難であった。本研究では、ミラージュ伝達で予言されるゲージーノ質量比によって、現実的な真空構造が導ける事を示した。更に、加速器実験・直接探査実験での検証可能性も明らかにし、論文としてまとめ、国内外の研究会・セミナーで発表した。 標準模型における強いCP問題を解決する模型として、高エネルギーでパリティを保存する模型を構築し、ニュートリノ、暗黒物質の性質や加速器実験での検証可能性を明らかにし、結果を論文を発表した。標準模型には3世代のフェルミオンが存在するが、ベクトル型の4世代目のフェルミオンを加える事で、近年のLHCb実験等で報告されている標準模型の予言からのずれを説明する模型を構築し、結果をアメリカの研究会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の前提となるヒッグシーノ質量項の生成機構について、計画で想定していたゲージーノ質量のパターンが有効な効果を与える事を示した。ニュートリノ質量との関連については解析を進めている段階であり、結果を得られていないが、既に課題に関連した興味深い結果が得られ、論文を公表、国内外の研究会で成果を発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ質量との関連について引き続き解析を進め、現在の観測結果を再現するパラメータ領域を特定し、伝達機構との関連を明らかにしていく。更に、LHC実験等の加速器実験での直接探査やフレーバーの破れによる、模型の検証可能性について解析していく計画である。それに加え、今年度に解析を進めた一重項ヒッグスが存在する場合についても考察し、ニュートリノ質量等とヒッグスポテンシャルの持つ真空構造の関連を探る事も考えている。
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Causes of Carryover |
必要な物品購入・旅費を支払った後、端数が発生したため。来年度の旅費にあてる。
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