2019 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ質量を説明する最小超対称標準模型の構築
Project/Area Number |
18K13534
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川村 淳一郎 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 訪問研究員 (00814667)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 超対称標準模型 / ニュートリノ質量 / 電弱対称性の破れ / 質量階層性 / 暗黒物質 / フレーバー物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次最小超対称標準模型(NMSSM)における1重項ヒッグス粒子が、電弱対称性に寄与するだけでなく、ニュートリノを含むクオーク・レプトンの質量及び、混合角を同時に説明できる事を指摘した。前年度に、NMSSMにおいて、実験と整合する電弱対称性の自発的破れを起こすパラメータが、特定のゲージーノ質量比の下では容易に再現できる事を明らかにしていた。NMSSMにおける1重項ヒッグス粒子は、標準模型に含まれるヒッグス粒子の超対称パートナーであるヒッグシーノの質量を説明する、という重要な役割を果たしていた。本研究ではこの1重項ヒッグス粒子がクオーク・荷電レプトン及び、ニュートリノの質量も同時に説明する模型を提案した。本研究では特に、Z4フレーバー対称性を持つ場合について解析した。この場合について、フェルミオンの質量・混合が説明できる、量子異常が相殺されている、電弱対称性が正しく引き起こされる、ためのフレーバー電荷の条件を明らかにした。1重項ヒッグス粒子はすべての標準模型フェルミオン、ヒッグスと結合していることから、フレーバーの破れを引き起こすが、その効果は湯川結合によって抑制されるため、容易に現在の観測からの制限を満たしている事を示した。更に、将来のトップクオークの稀崩壊やミューオン・電子遷移の精密測定によって、観測可能なパラメータ領域がある事を指摘した。これらの結果は、論文として発表した他、海外の研究会で発表した。 上記の超対称性模型の解析に加え、標準模型に新たなゲージ対称性と第4世代フェルミオンを加えた拡張模型において、近年の実験で示唆されているミューオン異常磁気モーメントや、B中間子の稀崩壊における標準模型からのずれを説明できる事を示し、2本の論文と国内外の研究会で発表した。更に、ベクトル型レプトンと暗黒物質による拡張模型について研究を行い、プレプリント論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に研究した、次最小超対称標準模型について引き続き研究を行い、ニュートリノを含む全ての標準模型フェルミオンの質量・混合を説明する可能性を指摘した。右巻きニュートリノを含まない最小模型についての解析は進行中であるが、昨年度の結果を取り入れて研究を発展させ、興味深い結果を得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
右巻きニュートリノを含まない最小模型についての解析を進めていく。超対称性の破れが、ニュートリノ質量や電弱対称性の破れにどのように影響するのか、明らかにする。そして、現在の観測結果との整合性、将来実験での観測可能性について明らかにしていく計画である。本年度に研究した、クオーク・レプトンの質量生成機構との関連についても議論していく予定である。
|
Causes of Carryover |
旅費が見積もり額を超えたことにより、物品費を旅費に充てたため、差額が生じた。 来年度の旅費として使用する予定である。
|