2018 Fiscal Year Research-status Report
Search for dark matter at hadron collider with precision measurement and exotic track
Project/Area Number |
18K13535
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 智 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (10784499)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 暗黒物質 / LHC |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質の存在はさまざまな天文学的観測などによって確立している。その正体というのは未だ不明であるが、それを解き明かすことはは現在の素粒子物理学で最も重要な課題である。大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は暗黒物質の正体を探るのに大きな役割を果たすと期待されている。 しかしながら、暗黒物質の加速器での検出というのは概して困難である。なぜならば仮に暗黒物質が生成されたとしても、暗黒物質は検出器を相互作用せずただすり抜けていくだけであるためである。そのため暗黒物質生成に伴って生成される光子やグルーオンなどを観測することで、暗黒物質の持ち去った運動量を推定する。これによって暗黒物質の検出を目指すのが通常であるが、これには大量の標準模型からのバックグランドが存在するという問題がある。 そこで本年度の研究では、暗黒物質の直接生成ではなく、その量子力学的効果を測ることで間接的に暗黒物質の検出を目指す方法を研究した。その結果、LHCでの標準模型過程への微小な補正を検出することで暗黒物質が間接的に発見できることを示した。 具体的には電弱ゲージ相互作用をおこなう暗黒物質のループ補正によって陽子衝突によって生成されるレプトンの微分断面積が補正を受けることを示した。その補正は1%かそれ以下の小さなものであるが、レプトンシグナルはLHCにおいて最も精密に測定可能なオブジェクトであるので、微小な変化であっても検出可能である。この方法は暗黒物質の直接生成に基づく発見能力よりも同じ程度か、場合によってはより強力であることがわかった。 さらにエキゾチックトラックを使った暗黒物質の検出についても研究を行なった。新しいトラック再構成の方法を提案し、暗黒物質の発見可能性が著しく向上することを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、どのような過程を測定するのが暗黒物質の間接検出にとって有効なのかを解き明かすことができた。この方法はLHCでの新しい暗黒物質検出の方法として注目をあびている。 もうひとつの課題であるエキゾチックトラックを用いた暗黒物質探査に関しては実験屋との議論は続いており、十分進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
LHCにおいて、暗黒物質の間接検出というテクニックが非常に有用であることがわかったので、それをもっと深めるための研究を行う。 まずは非摂動的効果も取り入れた暗黒物質の間接検出の研究を行う。今までは摂動的計算に基づいたものであるが、暗黒物質のタイプにとってはこの非摂動的効果が効き得る。 もうひとつは実験グループと共同研究を行い、系統誤差なども考慮した暗黒物質の検出可能性を調べる予定である。
|
Causes of Carryover |
旅費の概算と実費の違いにより,未使用額が生じた。翌年度の会議登録費などで使用する予定である。
|