2021 Fiscal Year Research-status Report
Search for dark matter at hadron collider with precision measurement and exotic track
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18K13535
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 智 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (10784499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / LHC |
Outline of Annual Research Achievements |
LHCなどのハドロン加速器実験は新物理探査として非常に強力である。この実験での大きな目標の一つは暗黒物質の発見である。だが暗黒物質を加速器実験で検出するのは必ずしも容易ではない。暗黒物質は文字通り、通常の物質とは相互作用をほぼしないので、暗黒物質が生成されたとしてもその検出は困難である。多くの場合、何らかの模型を仮定して、暗黒物質以外の粒子の生成を用いて、暗黒物質の検出を試みる。しかしながら、このような方法では、暗黒物質以外の物理に大きな仮定が必要になり、必ずしも暗黒物質を探査していると言えない状況にある。また、このような仮定なしではLHC実験では暗黒物質の検出感度が悪いことが知られている。 本研究では、LHCなどのハドロン加速器実験で発見が難しい模型をエキゾチックトラックを用いた探索と、量子効果を通じた間接的な方法を用いることで、より幅広い新物理探査を目指すものである。本年度は、これらの方法が有効に働く物理模型の考察を行なった。 ひとつはスカラー暗黒物質に関する包括的な研究である。暗黒物質をその量子数で分類することを考えたとき、最も単純な電弱相互作用を行う暗黒物質のひとつはアイソスピン三重項のスカラー粒子であることがわかる。このような模型のLHC探査はエキゾチックトラックを用いた探索が最も有効である。このような模型を暗黒物質残存量、直接・間接探査の展望なども含めた完全な解析を行なった。 もうひとつの模型は超対称性模型である。2021年にミュー粒子の異常磁気能率の新しい実験結果が公表されたが、その値は標準模型の予言とは大きく異なるものであった。これを説明するために超対称性模型が最も有望であるが、今までに他のヒッグス質量や精密測定と両立する完全な模型は存在しなかった。この模型を構成すると共に、LHCではエキゾチックトラックと量子効果による検出が有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非常によく進展している。前年度までにエキゾチックトラックを用いた探索と、量子効果を通じた間接的検出に関して、大きな成果が得られた。これらの結果はすでに論文と出版されている。そのため当初の研究計画は概ね達成できたと考えている。さらに2021年度はこれらを応用して、どのような新物理を探ることができるのかという発展的な課題に挑戦することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは一つは2021年度に行なった、物理模型の考察をより深めていきたいと考えている。特に量子効果による検出は簡略化された実験セットアップのもとでの考察は行なったが、より現実的な実験的セットアップを取り入れて系統誤差なども丁寧に処理して、現状のLHCでの制限などを明らかにする予定である。 もうひとつはエキゾチックトラックに関してである。現状はあくまで理論的な考察と簡易モンテカルロシミュレーションを用いたものに過ぎない。これをLHCで実際に応用するのは実験グループとの協力が不可欠である。研究会などで実験グループなどと密に連携して開発した手法を実践レベルまで昇華させることを目指す。実際、ATLASグループのメンバーとは頻繁に研究上のやり取りを行なっており、様々成果を得ている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、出席を予定していた研究会や出張がキャンセルとなった。2022年度では国内の加速器物理の研究会に参加するための旅費として使用する予定である。
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