2018 Fiscal Year Research-status Report
インフレーション宇宙で探る高エネルギー究極理論の粒子スペクトル
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18K13539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野海 俊文 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (30709308)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフレーション宇宙 / 非ガウス性 / 散乱振幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は原始揺らぎの非ガウス性を用いて高エネルギー理論が予言する新粒子を探索すること,特に有効相互作用の詳細な解析からインフレーションスケールより重い粒子のスピンを読み取る方法論を確立することである. 本年度の主な成果は「インフラトンの有効相互作用の符合から,その背後にある重い新粒子のスピンを特定できること」を示したことにある.散乱振幅の解析性やユニタリー性を用いると,インフラトンの有効相互作用のうちのいくつかの符号が普遍的に正になることが知られており,正値性条件として盛んに研究されている.我々は逆に,符号が普遍的に決まらない相互作用に注目した.特に,中間状態がスカラーの時にはその符号が正,中間状態がスピンを持つ時には負になることを散乱振幅の解析から示した.その結果に基づき,原始揺らぎの非ガウス性の符号から重い粒子のスピンを読み取る方法論を提案する論文を現在執筆している(神戸大学の大学院生2名と香港科技大学の大学院生1名との共同研究). そのほか,時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」にインフレーション中の粒子生成の効果を取り込むことに成功し,論文を出版した.構成した有効理論はインフレーションだけでなく時間結晶や同期現象などの物性系への応用も期待される. また,これらの成果を含む「非ガウス性を用いた新粒子探索」に関する講演を国内学会の招待講演1件,国際学会の招待講演1件を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インフラトンの有効相互作用のうち正値性条件で符号が決まらないものに着目し,その符合から中間状態のスピンを読み取るという方針は当初の計画にはなかった新しいアイディアである.この方向性は今後広がりを見せて行くと期待できるため,計画以上に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
技術的な問題から,本年度の成果の適用範囲は「ドジッター共形対称性の破れが小さい場合」に限られる.この領域では非ガウス性が典型的に小さいことが知られており,今後適用範囲を広げて行くことが重要になる.本年度のアイディアを時間並進対称性の自発的破れに基づく「原始ゆらぎの有効場理論」に拡張する.最初のステップとして,まずは原始揺らぎと重いスカラー場が相互作用する一般的な模型を考え,低エネルギーで得られる原始揺らぎの有効相互作用を決定し,この模型で記述されるパラメータ領域を同定する.
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Causes of Carryover |
年度末に滞在予定だった共同研究者の都合が悪くなり,滞在時期に変更が生じたため.次年度前期に招聘することで繰越し分を使用する予定である.
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Research Products
(14 results)