2019 Fiscal Year Research-status Report
Dualities in string and M-theory
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18K13540
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
酒谷 雄峰 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40636403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 双対性 / 超重力理論 / Double Field Theory / Exceptional Field Theory |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論/M理論におけるU双対性に関する以下の研究を行った。 (1) U双対性としてのE11対称性 超弦理論/M理論をトーラスでコンパクト化するとU双対性と呼ばれる対称性が現れる。U双対性群は、トーラスの次元に応じて様々なE型の例外群となるが、実はこれら全てを部分群として含むE11という対称性があり、これが超弦理論/M理論の対称性だと予想されている。本年度は、この予想に基づき、理論に含まれるブレーンおよびそれと結合する超重力場の分類を徹底的に行なった。さらに、これらの超重力場のU双対性変換則を求めた。反対称テンソル場の変換則は古くから知られていたが、新たに、mixed-symmetryポテンシャルと呼ばれる場の変換則を数多く求めた。本研究は、エキゾチックブレーンの世界体積理論の定式化などに応用できると期待している。 (2) 非可換U双対性の提案 通常のU対称性は理論をトーラスでコンパクト化した際に現れる対称性だが、より一般の群多様体でコンパクト化した際にも非可換U双対性という新たな対称性が現れるだろうと考え、それに関する研究を行った。通常のU対称性は、T双対性を部分群として含んでおり、これをPoisson-Lie T双対性と呼ばれる非可換T双対性へと拡張できることは古くから知られている。Poisson-Lie T双対性はDrinfel’dダブルと呼ばれるある種のリー代数に基づいた双対性であり、このDrinfel’dダブルを拡張することで非可換U双対性の定式化を目指した。具体的には、Drinfel’dダブルを部分群として含むライプニッツ代数を提案し、その代数構築を持つ時空の構成法を示した。さらに、そうして構成された時空におけるM2ブレーンの理論を調べ、運動方程式が非可換U双対性変換の下で共変的であることを示した。次年度の研究ではこの対称性を更に詳しく研究する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非可換U双対性は、それがどのように定式化されるべきか明確な方針が立てられない状況にあった。そこで、まずは昨年度に研究した「Double Field Theory (DFT)を用いたPoisso-Lie T双対性の定式化」を手がかりとして取り組むことにした。DFTはT双対性共変な超重力理論の定式化だが、これをU双対性共変な形に一般化した理論としてExceptional Field Theory (EFT)が知られている。昨年度の研究から、DFTを用いてDrinfel'dダブルを導出する手法が明確になったため、この手法をEFTへと素直に拡張することにした。その結果、簡単な計算から新たな代数の構造が見えてきたため、予定していたよりも早く非可換U双対性の代数構造が明らかになった。また、非可換U双対性をM2ブレーンの世界体積理論で実現する研究についても、特に困難が生じることなく、順調に目標を実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、4次元以下のリー群に関するライプニッツ代数を提案したが、それをより大きな次元へ拡張することで、より興味深い代数構造が現れると期待される。次年度の研究ではそのような拡張に取り組みたい。また、EFT (Exceptional Field Theory)はM理論とIIB型超弦理論の両方を記述できる枠組みだが、本年度の研究ではM理論の描像を重点的に調べた。M理論とIIB型理論の間の非可換双対性を調べる上では、IIB型理論における代数構造についても調べる必要があるため、次年度の研究ではIIB型の描像も詳しく調べる。さらに、非可換U双対性が超重力理論の対称性であるかはまだ示されていない。そこで、次年度の研究では、EFTの運動方程式が非可換U双対性変換の下で共変的に変換されることを示したい。目標は明確だが、計算が煩雑になることが予想されるため、効率的な計算方法を探りながら取り組みたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で参加を予定していた研究会が開催中止になったことなどから、予定していたより旅費を使用しなかった。本年度の未使用額は来年度の旅費または物品費として使用する予定である。
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