2021 Fiscal Year Research-status Report
Dualities in string and M-theory
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18K13540
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
酒谷 雄峰 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40636403)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 双対性 / 超重力理論 / Double Field Theory / Exceptional Field Theory / Drinfel'd double |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 昨年度は非可換U双対性の基礎となる代数構造を詳しく調べたが、この代数を利用して新たな超重力理論の解を構成する研究を行った。11次元超重力理論の解をIIB型超重力理論の解へ変換する例や、一般化されたYang-Baxter変形により超重力解を連続的に変形する例など、様々な具体例を調べ、非可換U双対性変換がExceptional Field Theory(つまり超重力理論)の対称性であるという予想を裏付ける結果を得た。 (2) 非可換T双対性は、Drinfel'dダブルというLie代数に基づいているが、このLie代数にはある制限がついているため、Hフラックスと呼ばれる量が存在する解に対しては非可換T双対性を適用できない。しかし、ある種のO(D,D)対称性を用いれば、Hフラックスを消せる場合がある。この点に着目し、Wess-Zumino-Witten模型の標的空間に対応する、Hフラックスを含む超重力解に対する非可換T双対性を議論した。 (3) Poisson-Lie T双対性の一般化として、Jacobi-Lie T双対性を提案した。Jacobi-Lie T双対性には先行研究があったが、そこでの提案とは異なる形で超重力理論の場を構成し、Jacobi-Lie T双対性がDouble Field Theory(つまり超重力理論)の対称性であることを示した。さらに、Ramond-Ramond場の運動方程式もJacobi-Lie T双対性の下で共変的に振る舞うことを示した。 (4) 非可換双対性の新たな一般化として、ヘテロ型超重力理論など、超対称性が最大限の半分だけが保たれている理論における非可換双対性を調べた。時空の次元によって双対性の群が変わるが、具体的に、10次元超重力理論を4次元以上の時空へとコンパクト化した場合について、非可換双対性の基礎となるDrinfel'd代数を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヘテロ型理論におけるDrinfel'd代数の構築は、昨年度に計画していた通り完成させることができた。さらに、これと類似したDrinfel'd代数を利用することでJacobi-Lie T-pluralityという新たなクラスの非可換双対性を提案した。この点については、当初の計画以上の成果が得られた。 一方、非可換U双対性については、様々な具体例を用いることで、非可換U双対性が超重力理論の対称性であるという示唆は得られたが、まだ一般的な証明には至っていない。一般的な証明には、Exceptional Field Theory(つまり最大限の超対称性をもつ超重力理論)のflux formulationと呼ばれる定式化が必要になるが、まだこの定式化には取り組めておらず、このことから、計画はやや遅れていると判断した。しかし、dressing cosetと呼ばれる一般化された商空間における非可換双対性に関する理解が進んできており、非可換U双対性のさらなる拡張ができそうだという兆しが見えている。次年度の研究では、dressing cosetへの拡張も念頭に置きつつ、非可換U双対性の証明に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究では、Exceptional Field Theoryのflux formulationを定式化し、非可換U双対性がExceptional Field Theoryの運動方程式の対称性であることを示す研究に取り組みたい。非可換T双対性で知られている結果を考えると、非可換U双対性の結果として得られる時空は、Exceptional Field Theoryの解ではあるが、従来の超重力理論の解にはならない場合があると予想される。このような時空は、ある変形された超重力理論になると期待されるが、この変形された超重力理論がどのような理論なのかも詳しく調べたい。さらに、通常の非可換U双対性をさらに拡張させた、dressing cosetの非可換U双対性の研究も進めたい。 また、U双対性の部分群であるT双対性に関しても、まだ残されている課題がいくつかある。これまでに調べられている非可換T双対性は、二階微分の超重力理論における対称性だが、高階微分補正が加えられた場合にでも、非可換T双対性が破れずに残ることが示唆されている。余裕があれば、このような高階微分補正が加わった理論における非可換双対性についても詳しく調べたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響が長引いており、予定していた旅費を使用する機会がほとんどなかった。本研究課題は、ヨーロッパを中心とする海外で研究が盛んに行われているため、研究を円滑に進めるためには、海外出張の機会に対面で議論を行うことが有用である。次年度には、対面で開催される研究会も増えると期待し、次年度使用額を旅費として使用したいと計画している。また、対面での議論が難しい場合には、オンラインでの議論を円滑にするために役立つ物品を購入したいと考えている。
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