2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Study of Black hole dynamics in Higher dimensional gravity using the large D limit
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18K13541
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鈴木 良拓 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 数学研究所専任研究所員 (90711490)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジー転移 / リッチフロー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者が共同研究者と共に開発した次元数Dを十分に大きいものとする高次元極限、または1/Dを小パラメータとして展開する高次元近似を用いて、高次元ブラックホールのダイナミクスを解析的に明らかにすることである。これまでの研究により、ブラックホールホライズンがある程度緩やかな曲面から構成される場合には、高次元極限においては、ブラックホールのダイナミクスが有効的な膜の運動方程式に帰着することがわかった。 ところが、一部に激しい勾配をもつ場合(例えば非常に小さいくびれを持つブラックストリングなど)については、高次元近似の有効性はよくわかっていない。このような高勾配をもつ解の解析は数値解析においても一般に困難であるため、高次元近似を用いた解析的手法を確立することができれば非常に有用である。
申請者は上記の重要性を鑑み、研究計画2「高勾配自由度の研究」の一環として、コンパクト化された時空における解空間上のブラックストリング・ブラックホール転移について、高次元近似を用いた解析を優先して行った。 従来の高次元近似とは異なるスケーリング極限を用いた結果、細くくびれたブラックストリングが錘状(cone)のくびれを持つ臨界解を経てブラックホールの列へと解空間において連続変形していく様子が、簡易な解析解によって記述されることがわかった。また、同様の解空間上のトポロジー転移の様子は、より一般には、幾何学においてよく知られているリッチフロー方程式によって記述されることを発見した。この結果は高次元近似の適用範囲を大きく広げるものであり、多くの拡張や応用が考えられる。本結果は論文として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画2を優先したため、その他の計画については当初の計画通り進んでいないが、研究計画2については大きな成果が得られたため、概ね順調と言える。 研究計画2についてはさらなる成果を求めつつ、その他についても今回の結果を取り入れて着実に進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度のホライズンのトポロジー転移に関する結果は、広い応用可能性を持っている。今後は従来の研究計画を進めると同時に、以下のような関連課題についても考えていきたい: (1)今回の結果をブラックリング・ブラックホール転移の解析に適用することで、研究計画1「高次元近似による対称性の低い高次元ブラックホールの研究」を大きく進めることができる。 (2)今回の結果は静的な場合にとどまるが、時間依存性を含める拡張を研究することで、研究計画2の残りの項目の解明に努める。 (3)トポロジー転移の臨界解の前後では非常に勾配の激しい部分が存在するため、高次曲率項が存在すればそのトポロジー転移への影響は非常に大きいものと考えられる。今回の結果を高次曲率理論に拡張することで、研究計画3「高次元近似を用いた高次曲率重力理論の研究」についても、当初の計画以上の結果が期待できる。。
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Causes of Carryover |
今年度はスペインバルセロナ大学への異動に伴い、想定よりも研究打ち合わせや学会への参加が少なくなった。次年度は積極的に学会参加をしていきたい。
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