2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Study of Black hole dynamics in Higher dimensional gravity using the large D limit
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18K13541
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鈴木 良拓 大阪市立大学, 数学研究所, 特別研究員 (90711490)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブラックホール相互作用 / エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者が共同研究者と共に開発した次元数Dを十分に大きいものとする高次元極限、または1/Dを小パラメータとして展開する高次元近似を用いて、高次元ブラックホールのダイナミクスを解明し、この近似の発展または応用研究を行うことである。 ブラックホールホライズンがある程度緩やかな曲面から構成される場合には、高次元極限においては、ブラックホールのダイナミクスが有効的な膜の運動方程式(高次元有効理論)に帰着することがわかっている。さらにブラックブレーン上の高次元有効理論においては、周期性を持たないガウス分布状の「ブロブ」と呼ばれる解が存在し、ブロブ解によってコンパクトな高次元ブラックホールのダイナミクスが記述されることがわかった。本年度はこの「ブロブ近似」に関する継続研究を主として行った。
高次元有効理論において、不安定性の成長におけるエントロピーの動的な発展というものはこれまでよく理解されてこなかった。申請者は、高次元有効理論におけるエントロピー流を用いることによって、動的に変形するホライズンの熱化の様子を明示的に解析し、ホライズンの時間発展中におけるエントロピー生成について理解を深めた。特に、ブラックホール合体や重力不安定によってホライズンがちぎれていく場合のエントロピー生成の様子を視覚化することができた。
また、去年度より発展させてきた有効理論におけるブロブ近似の手法について継続研究を行った。結果、より一般的な場合にガウス分布的なブロブが複数存在する場合について、ブロブ間に働く引力をそれらの間のくびれを介した有効相互作用として解析的に記述することができ、またこれまで求めた有効理論におけるいくつかの数値解についても、ホライズンが大きく変形した段階ではガウス分布的な膨らみと長く薄いくびれ領域が繋がった形状となり、ブロブ間の有効相互作用を用いてよく近似されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的(1)については順調に進捗し、高次元ブラックホールのダイナミクスについて、一般的な理解が進んだが、研究目的(2)の高勾配自由度の研究および(3)その他応用研究については遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は応用研究を主として遂行していく。特に研究目的(3)の応用研究については、既にAdS/CFT対応に関連する応用研究について現在共同研究が進行中であり、また高次曲率理論についての応用研究も共同研究を計画中である。 研究目的(2)については発展がやや困難であるため、実行可能な方向を探りつつ、高次元極限の適用領域を拡大させるような他の方向性も探っていく。
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Causes of Carryover |
Covid19による渡航制限によって現地での国内・国際会議が開催されず、また大学間移動を伴う研究打ち合わせを行うことができなかった。感染状況が改善し次第、旅費の使用を再開していく。また、機器や研究資料の購入に当てることで、研究遂行が加速できないか検討していく。
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