2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical Study of Black hole dynamics in Higher dimensional gravity using the large D limit
Project/Area Number |
18K13541
|
Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
鈴木 良拓 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), ポストドクトラル研究員 (90711490)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ブラックホール / 高次元重力理論 / 高次元極限 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は高次元近似を用いて高次元ブラックホールの物理を解明することである。 今年度は、一つ目の研究課題である「高次元近似による対称性の低い高次元ブラックホール解の研究」を軸に研究を行なった。特に対称性の低いブラックホールの研究として、「AdS時空中におけるブラックストリングの不安定性やそのダイナミクス」、「斜方格子上にコンパクト化されたブラックブレーンの変形解」「コンパクト化にねじりをいれたSquashedブラックホール解の導出」について研究を行った。研究成果は論文にまとめ、雑誌に掲載された。 3つ目の研究課題である「高次元近似を用いた高次曲率重力理論の研究」の一環として、拡張重力理論の一つであるEinstein-Gauss-Bonnet(EGB)理論において、複数の回転軸が等しい角運動量を持つ場合の回転ブラックホール解を高次元近似を用いて解析し、初めて摂動近似の範囲を超えた解析解を得ることができた。本成果については雑誌投稿中である。 さらに、広い意味での高次元ブラックホール研究の一環として、microstate geometryと呼ばれる5次元Einstein-Chern-Cimons理論における回転時空について、粒子の安定軌道を調べた。この解はブラックホールではないが遠方の観測量のみでは回転ブラックホールと見分けがつかない。粒子の安定軌道の有無を調べることで、ブラックホールとの違いを判別できることがわかった。本成果については雑誌投稿中である。 いくつかの研究成果については、日本物理学会や国内で開催された国際学会(JGRG)などで成果発表を行なった。 また、2019年度に行なった「高次元極限を用いたブラックホールのトポロジー転移の研究」について素粒子奨励会より第16回中村誠太郎賞を受賞し、3月の日本物理学会において受賞講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つ目の研究課題である「高次元極限における高勾配自由度の研究」の進展が予想よりも困難であることがわかってきたため、計画を少し変更して、一つ目の研究課題である対称性の低いブラックホールの探索を中心に研究を進めた。結果、当初の想定よりもより一般的な状況下でのブラックホール解が得られている。 また、かねてより進んでいなかった3つ目の研究課題である「高次元近似を用いた高次曲率重力理論の研究」については2次の曲率補正を持つEinstein-Gauss-Bonnet(EGB)理論において、複数の回転軸が等しい角運動量を持つ場合の回転ブラックホールの研究を行い、第一の進捗成果を得ることができた。より一般的な場合についても未発表ではあるが、いくつか予備的な成果が得られている。以上の点を総合的に加味して、おおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1つ目の研究課題については、これまで順調に推移しており、特に変更なく研究を推進する。 2つ目の研究課題である「高次元極限における高勾配自由度の研究」については、当初計画のままの推進は困難であるため、他の2つの研究課題に注力しつつも、別の形での研究継続が可能か探っていく予定である。 3つ目の研究はやや遅れているものの、今年度の成果を踏まえて、着実に推進していく。 また、今年度はコロナ禍のため、国際的な研究発表の機会が減少していた。今後は感染状況を踏まえつつ、積極的に国際的な研究活動を行なっていきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍によって、国内外の研究会議への対面参加や共同研究における打ち合わせ出張の機会が激減し、当初予定していた旅費が使用されていないため。助成期間を一年延長したため、コロナ禍の緩和状況を見ながら、会議への参加を増やしていくことで対応する。
|